Book

□日曜日、アグレッシブ夕ごはん
1ページ/2ページ

「「「明日月曜か〜………」」」


テレビから流れてくる陽気なオープニングとはかけ離れた、三者三様ため息混じりの憂鬱な低い声が、零した麦茶のようにじわじわと広がって行く。


「ぎゃ、ワリ!」
「ちょっと!ティッシュ!」
「やべ、教科書濡れた。つかコレ完全なるサザエさんシンドロームだよな」


デッサンの本の端を拭きながら、ウソップが長い鼻を掻いた。麦茶の洗礼を受けてひんやりした座卓にこてんと頬を預けて、私は軽く男二人を睨む。


「あんたたちは学生なんだから遊びに行くようなもんでしょ。私はし・ご・と!なの」
「ひでェな、美大生は忙しいんだぞ!課題制作に追われてんだから!体育大生は知らねェけど」
「おれだってベンキョーしなきゃなんないんだぞ…今週小テストあるし……ハラ減ったよナミ〜〜」
「もう18時半だもんね。作る?ウソップ、なんかある?」
「んにゃ、素麺ぐらいしか」


立ち上がったウソップが、ごそごそとキッチン収納を探って、やべェと大袈裟に天を仰いだ。


「死にかけのタマネギが袋ごと」
「どれ?まだ食べられるわよこれくらい。あ、カレールーもあるじゃない」
「カレーか!?いいな!!」


目を輝かせて飛び込んできたルフィの肩をがっしり掴んで二人で首を振る。


「言っとくけどお前は作ろうとか思うなよ」
「そうよ!あんた前にカレー作った時、ジャムと魚の骨入りの水色のネバネバした何かを錬成したのを忘れたとは言わせないわよ」
「そうだったか?」


からからと笑い声を上げるルフィに呆れながら、自分の家にあるのと全く同じキッチンを見回す。コンロの上には昼にラーメンでも食べたのか、麺が少しこびりついたままの大鍋が無造作に置かれている。シンク周りを片付ける手間を考えたら、今日は自分の部屋で料理した方が良さそうだと判断して、勝手知ったる冷蔵庫から萎びかけた大根を救出した。


「にんじんととじゃがいもも多分あるし、ウチで作るから、二人お肉買って来てくれない?あ、その前にお米だけ研いでって。……いや、やっぱりルフィ連れてくと余計なお肉買いそうだから、ウソップは炊飯器セットしておつかい!ルフィはそのまま待機!!」
「えーーー!おれもなんかしてェのに!!」
「オッケ、おいルフィ、そこの油絵まだ乾いてねェから触るなよ」
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ