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□01 GAMES
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「あ、この前の…えぇと、トラ男君?」
「………トラファルガー・ローだ」
「やっぱりトラ男君じゃない。こないだは奢ってくれてありがとう」


偶然は必然、運命だなんて気障な台詞を吐くつもりはないが、再び相見えた女を誘うのは至極当然のことに思えた。一度逃げられた手前柄にもなく緊張したが、タダ酒だと聞くや目の色を変えた女に肩の力が抜ける。奢ってもらえる相手ならそうやって、誰にでもついていくのだろうか。


(って、心配してどうする)


取って喰おうとしているのは他でもない自分なのに。
こちらの複雑な感情なんてどこ吹く風、女は今日も周囲が惚れ惚れするほどいい飲みっぷりだった。


「なあ、あんた、決まった相手はいるのか」
「そうねー、決まってる訳でもないけど……」


微調整は後からでいい。序盤に距離を詰める方が大事。いきなりの質問にも女は動じることなく、ゆっくりと唇を舐め、揶揄うような笑みを作った。


「……大食漢ですぐ冒険したがる永遠の少年に、無愛想な筋肉バカ迷子。器用なくせに嘘だけは下手くそなお調子者、それに女たらしのエロコック。相手しなきゃならないやつらがたくさんいて、手一杯なのよ」


言葉通りに受け取れば、最低4人は男がいる。あるいは手のかかる弟たちかもしれないし、単に友人なのかもしれない。明らかなのは立ち入る隙はないとばかりに鼻先で扉を閉ざされたことで、それは少なからず衝撃だった。女に誘いを断られるなど、生まれてこの方初めてのことだったから。


「逆に燃えるな」
「へぇ?」


くぴり、とまたアルコールが吸収されていく細い喉が艶めかしい。試すような視線が交錯して、互いの口元が弧を描く。


「振り向かせたくなる」


バーストを怖がっていては攻められやしない。
冷えた指先はグラスと別れさせて、宣戦布告のくちづけを。毒林檎のように不吉な紅い唇はまだお預けだ。




狙い澄ました矢がハートの真ん中に突き刺さる日はいつだ?





01 GAMES
(誰よりも先に)





END
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