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□01 GAMES
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眩しい女だ、と思った。


数合わせに連れて来られる飲み会は大抵がいわゆる合コンで、相手が医者ってだけで目の色を変える頭の悪そうな女に囲まれて、たいして美味くもない酒を飲む羽目になる。だが仕事に追われる日々の中、悲しいかな人並みに溜まっていく性欲を発散する場としてはうってつけだったことは否定出来ない。後腐れの無さそうな女と関係を持ち、後で悪友たちにお前を誘うんじゃなかったよ、とボヤかれるまでが1セットだ。
打算と欲望と、冷凍食品感丸出しのつまみしかない駅前の居酒屋に、場違いなくらい輝かしく、その女は現れた。


女は合コンに自分より可愛い女は誘わないらしい。その理論でいくとナミと名乗った女はこの飲み会の主催者であるべきだが、タダ酒が飲めると聞いたから来た、あっけらかんとそう言った女は男たちを適当にあしらいながら、ただひたすら美味そうにグラスを空けていった。






「ハァ!?ヤッてねェの?」


僅かに手元が狂って、矢は中心のやや右にそれた。−13。


「いつもみたいに飲み直そうっつって次に行ったんじゃねェの?」
「……一軒目で相当飲んでたからな。二軒目は軽く済むと思ってたらとんだ間違いだったんだよ。全く勢いが衰えねェまま、まあ飲むわ飲むわ」
「ダイソンかよ」


スローラインを踏んで構え直し、ひと呼吸置いてから解き放つ。投げた矢がすうっと的に吸い込まれるような感覚が好きだ。けれど心の乱れは狙いのズレに直結して、修正をかけたつもりが今度はだいぶ左に行った。予想外の11トリプル、−33。


「ちょっと対抗心を持ったのが運の尽きだな…こっちがべろべろに酔わされて、それどころじゃなくなっちまった」
「へェ〜珍しい。すげーオンナだな、美人だったのに」


狙った女を落とせなかったことが余程面白いのだろう、嫌な笑みを浮かべる赤髪の友人に中指を立ててみせ、最後の矢を構える。
このおれが失敗するって?有り得ねェ。こないだはそう、ほんの少し、アテが外れただけだ。


次はーーー必ず。


痛快なブル音が響き渡る。ひゅうと口笛を吹いたユースタス屋と場所を交代し、勢い良く酒を飲み干した。
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