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□恋のメロディー
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「エース!!……と、誰……?」


揺らめく炎の中、現れたのは見知った黒髪の青年だけでは無かった。舞い踊る火の粉を従えて、金糸を編んだような髪はきらきらと煌めいて。口元に上品な笑みを湛えたその人はーー


(………王子様、みたい……)


胸の奥で、聞いたことのない音色が響いた。






「ごべんな、おで、ナミを守れなぐで」
「大丈夫よ、チョッパー…ルフィ達が、すぐに助けてくれるわ」
「でもよゔ、どんどん島から離れていぐぞ……ナミがいないのに、追ってこれるかな」


仲間と離れ離れだったこの二年、出来る限りの努力はしたつもりだったけれど、まだまだ甘かったわ。
傍らでしゃくり上げるチョッパーを宥めながら、ナミは唇を噛んだ。油断したとはいえ、食糧調達に寄港した島で、名前も知らないような下っ端の賞金稼ぎに誘拐されるなんて。


「さすが頭、まさかあの麦わらの一味の”泥棒猫”を捕まえるとは!!」
「グフフ、しかしこりゃ滅多にお目にかかれない上玉だ…海軍に突き出す前に、ちょっくら味見してもバチは当たんねェんじゃねェか?」
「ナミに触るなっ!!」
「うォッ!!…っ畜生、この化けモンが!!おいコイツを殺せ!大した金にもならねェ、海に捨てちまえ!!」
「っ、やめてーーーッ!!!」


伸びて来る汚らしい手に噛み付いてやろうと身構えたナミだったが、それより先に動いたのはチョッパーだった。鎖でがんじがらめに縛られたトナカイは、男の手を角で突き刺し、振り払われた勢いで宙を舞う。その先に待っているのは男達が取り出したナイフで、仲間の危機にナミはあらん限りの声を張り上げた。


ドゴォォォンッ!!


「!?なんだっ?…熱っ、火が!頭ァ、船が燃えてますッ!!」
「なにィ!?ぐっ、誰だ貴様らァ!!」


瞬く間に船を包み込み出した火に思わず身を竦めると、それは何故か器用にナミとチョッパーを避けて広がっていく。炎の向こうで男達が誰かと戦う音がしたが、すぐに短い悲鳴が聞こえて、勝敗は呆気無く決したようだった。


「あー、おれはエース。白ひげ海賊団二番隊の隊長を任されてます、どうぞよろしく。女の子の悲鳴が聞こえたんでな、何事かと駆けつけました」
「…エース、全員気絶してるから聞こえてないと思うぞ」
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