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□B
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どく、どく、と、鼓動が速くなる。
とっくに定位置に戻された筈の心臓は、あの日以来どこか壊れてしまった。
痛みを伴うほど加速するそれを宥めるように胸元に置いた手は呆気無く引き剥がされて、露わになったそこに視線が突き刺さる。
数週間前の情事なら、とっくに消えている筈の。
「…ッ、なんでだ……!」
「いっ…!」
顔を歪ませた男は、執拗に残された痕を皮膚から抉り取らんばかりの勢いで歯を立てた。鋭い痛みと、滴る血の感触に、思わず呻き声が漏れる。
「……ここんとこ、目も合わせねェと思ったら、こういうことか……」
「ぞろ、ちが」
「何が違うッ!?」
あまりの剣幕に、声帯からは引き攣れた悲鳴しか出てこない。噛まれた傷痕が、骨が折れそうなほど強く掴まれた腕が、痛い。
「いつからだ…?いつからローとよろしくヤッてた?あんな風にしがみついて、まるで」
「みて、たの?」
「…無理やり襲われてんのかと思って、危うく刀抜くとこだった。お前があいつの首に手ェ回したの見て、情けなくも固まっちまったよ……!いつからだ!?おれはっ、お前と別れ話をした覚えはねェぞ!!」
「え、」
(それって)
望んでも得られないと諦めていた感情が、確かにその隻眼に滲んでいることに気を取られていると、ゾロの指が予告無く下着の中に滑り込んだ。いつもの確かめるような優しい動きではなく、乱暴にねじ込まれたそれを、とろとろにぬかるんだ場所は何の抵抗も無く受け入れる。それどころか飽きもせず新たな蜜を吐いて、どこまでも貪欲に節くれ立った指を締め付けた。
「やっ!ん、あぁ!」
「…こんだけ濡れてりゃ十分だな」
「待っ、ゾロ、ーーッあぁ!」
あてがわれた熱い切っ先は止める間も無く、一気に柔らかな肉を引き裂いた。