Book

□wherefore art thou Romeo
1ページ/3ページ

ーー惹かれ合っては、いけない












どうしてなの、と、ナミはいつもと同じ問いを投げかけた。
デートは長くても十数分。本来、そんな甘やかな響きでこの密会を誤魔化してはいけない二人。誰もいない場所で適度な距離を保ったままの男と女は、追う者と追われる者の関係だから。勿論そこにロマンチックな意味合いは皆無で。


「…何度も言っているでしょ。お前さんたちを他の海賊と一括りにしてしょっぴくのは簡単だけど、あの小僧には説明のつかない……何か、を感じてるって」


海軍において若くして大将の地位を得た男ーークザンは、その大柄な身体を少し竦ませて眉根を寄せた。まるで背負った正義の二文字が、急に牙を剥いて背中に噛み付いたかとでもいうように。


「ふうん……」
「ご不満なら、『取引』は止めて追いかけっこでもするかい?」
「私なんて瞬時に凍らされちゃうと思うけど」
「謙遜はいけねェ。男と女の駆け引きは、じっくり時間をかけた方が楽しいでしょ。ましてこんな別嬪さんが相手なら」


揶揄うような言い方に、ナミの緊張した面持ちが少しだけ緩んだ。






「何度取り逃がしゃあ気が済むんじゃあ!!」


だん、と会議室の円卓に打ち付けられた拳からマグマが飛び散った。円卓を囲む面々は慣れたもの、それぞれ茶を啜りながら器用に避ける。


「がっはっは!さすがわしの孫!!」
「黙っとれガープ貴様!!!」
「オーー……逃げたモンは仕方無いねェ〜〜〜……」


いつまで経っても捕まらないばかりか、どんどん名を上げていく若き海賊の勢いを、海軍は重く見ていた。行き先を張っていても何故か包囲網を掻い潜り、また次の事件を起こす麦わらの一味は、この会議の重要な議題で悩みの種でもある。




「ちょっとお待ち」
「?なんだい、おつるさん」


会議室を出たところで、険しい顔の老女がクザンを呼び止めた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ