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□守護騎士の受難の日々
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それ以来だ。
行く島行く島、行く先々で、奴がナミさんの前に現れる。接触して来ることもあるし、そうでないこともある。だがナミさんの隣から離れないおれの見聞色レーダーに、常々MAX値で引っかかるのだ、あの男の気配が!!!


「余程ナミのことが気に入ったのかしら……あの、鷹の目が」


あまりの出現率にもしや知らない間にうちの船に密航してるのでは、と勘繰ったおれは、泣きながらロビンちゃんに事情を話した。恋人を守れない上、他のレディの手を煩わすとは情けない。かの鷹の目によるナミさんストーキング疑惑にらしくなく取り乱したロビンちゃんは、サニー号に手当たり次第目を咲かして調べてくれたけれど、密航者の痕跡はひとつも無かった。
突然生えた目に驚いたウソップが火薬を取り落として芝生を盛大に焦がしたのと、同じくびっくりしたブルックが海に落っこちたのを助けようとしてチョッパーも落っこちるという事件が発生しただけで。




「…………アンタ、暇なの?」


煙草に火を点ける。
ふう、と吐いた煙が、大量の紙袋にかからないように気をつけて。
留まることを知らない購買意欲に忠実なナミさんが吸い込まれて行ったブティックの前で、荷物番をしているおれの後ろに、静かに奴が現れた。


「七武海ともあろうお方がそんなに暇じゃあ、平和な世の中だこと」
「……何処へ行っても、あの娘の隣にはお前がいるな」
「そりゃどうも。恋人だもんで」
「生温いことを」


視線が交わったのは、多分二度目だ。奴もおれも、いつも見ているのは彼女だから。


「恋人だというなら、何故今日、三度も知らぬ男に声を掛けられる前に排除しなかったのだ」
「……タチ悪そうな奴ァ先に潰してるよ。ただ、『男連れでも声を掛けたくなる美女』ってブランドで、少しばかりは彼女のプライドも満たされるもんでね」


バランスが大事なのよ、と皮肉ってみせたおれの心配りは、恋愛に疎そうなオッサンには響かなかったご様子。


「分からん……おれなら、他の男の目にあの娘が映り込むことすら、許し難いがな」
「ーまァ、おれも今同じ気持ちですが」
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