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□守護騎士の受難の日々
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「……………連れまで招待したつもりはないが」
「一人で伺います、と言った覚えもないわ?」




なにこれ。
少しばかり気分を害したようにも見える世界最強の剣士と、意に介さず微笑む美女と、ガルガルするおれと。
つか、なにこのレストランの豪勢な佇まい。部屋はそれぞれ個室になっていて、池や橋まである中庭に下りていけるようになってる。給仕の女性は呼ばない限り来ない。
こんなとこにナミさん連れ込んで何する気だったんだこの野郎。


「はじめまして、ジュラキュール・ミホークさん。ご存知で招待したのだろうけど私は麦わらの一味の航海士ナミ、こちらはコックのサンジ君。その節はウチのマリモが大変お世話になりました」
「ミホークでよい。ロロノアは変わりないか?」


あーー、うん、すごいざっくりした紹介だねナミさん……奴はおれのことは最初の一瞥以来空気だとでも思ったようで、和気藹々と食事が進む。思ったより当たり障りの無い会話ばかりで、何かしようもんならいつでも首肉(コリエ)シュートをキメてやろうと用意されていた脚の出番も無いまま、取り敢えず料理を口に運ぶ。む、このソース美味ェ、何のスパイスかな。




「……それで?」


全く物怖じすることなく食後のムースまでぺろりと平らげたナミさんは、チーフで唇をゆっくり拭うと妖艶に笑った。


「私に何のご用かしら。政府側の人間と手配中の海賊が出逢ったら、お互いすべきことは決まっていると思うんだけど」
「殺したり捕らえたりする気ならばとっくにやっている。ただ、ロロノアから聞いていた、お前という女が実際如何程のものか……興味があっただけだ」
「私、あなたの好奇心を満たすくらい、魅力的な女だった?」
「そうだな………隣の小僧から、奪ってやりたくなるくらいには」




冷笑と燃える怒りが交わる横で、稀代の美女はルージュが取れた筈の唇に真っ赤な微笑みを乗せて、それは光栄だわ、と。
おれの腕に自分のそれを絡めた。
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