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□守護騎士の受難の日々
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世界のパワーバランスを保つ、三大勢力の一角を担う七武海。そこに長く君臨し、世界最強の名を欲しいままにする男。群れず、媚びず、ただひたすらに強くある存在。
その者と、初めて二人きりで対峙した時ーー
「……………暇なの?」
「じゅっ、ジュラキュール・ミホーク!!?」
「そ。”鷹の目”から」
陶器のマグカップから溢れた熱い紅茶はみるみる自分の膝下と床を汚すけれど、愛しのナミさんに火傷を作った訳じゃないから全然問題ない。むしろ、ちょっと何してんの大丈夫?なんて甲斐甲斐しく布巾で拭いてもらえるなら怪我の功名というやつで。
「なっ、なんで?なんで鷹の目!?」
「うーん、私が可愛いから?」
それはもう何年も前から知り過ぎるくらい知っているけど、今聞きたいのはそういうことじゃない。
忙しい航海士とコックが束の間の休息に、二人きりのあまーいティータイムを楽しんでいるまさにこの至福の時に、タイミング良く飛び込んで来た郵便が、なんであの鷹の目からおれの恋人宛てのデートのお誘いだったかってこと。
「ここ、次の島で一番高級なレストランみたい。なに着て行こうかしら」
いや、もう行く気満々だよこの人。
「ちょっと待ってナミさん!本当に行く気!?」
「だってゾロがお世話になった人だし、お礼くらい言っておくべきじゃない?」
「相手七武海だよ、敵だよ!?罠かもしれないよ!?」
「私は直接会ったことないけど、ゾロやルフィから話を聞いた限りでは、そんな卑怯な手を使う人とは思えないわ」
「大体初対面の人間にいきなり…つか、なんで次の行き先知ってんだ!!?」
「さあー…?でも、鷹の目ってダンディーなおじさまっぽいし、私も会ってみたかったしー」
そうだ、ナミさんって割とオッサン好きなんだった……
そのルーツに違いない、遠い東の海の、風車を頭に挿したオッサンのことを思い出して、がくりと項垂れる。恨むよゲンさん。
「一人で来いとは書いてないわ?サンジ君も来ればいいじゃない」
招待状片手にウインクしたナミさんの言葉に、おれは出かけていた涙と鼻水をなんとか引っ込めた。