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□恋は鍵屋を嘲笑う
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潜水艦は他の船と違い、その名の通り海に潜って航行出来る。隠密行動にはうってつけだ。
もし麦わらの一味と同盟を組んでいなかったら、潜水艦の特性を生かし、ローはどこまでもナミを追っていただろう。堂々と正面からグイグイ来られるのと、ストーカーの脅威に怯え続けるのと、果たしてどちらがマシだっただろうか、と。
今はそれどころではなくて。




「なんなのアンタ!?なんでそんなに私に執着するの!?まだ出逢って日も浅いのに!!」
「厳密に言うと出逢ったのは二年前のシャボンディ諸島で、心臓に雷を打ち込まれたあの日以来、順調に愛を育んできた訳だが」
「アンタにサンダーボルト=テンポかました覚えはないし、さも遠距離恋愛してましたみたいな言い方はやめて!一目惚れするのはそっちの勝手だけど、付き合ってもいないんだから!!」
「付き合ってくれと言ったら付き合ったのか?」
「……あのね、この二年、私はルフィと仲間たちの為に必死で学べることをみんな詰め込んで来たの。他の男が立ち入る隙なんかなかったわ」
「つまり浮気はしてないと」
「だからそもそも付き合ってすらーー」
「なら結婚すればいい」
「人の話を聞け!!!」


ナミは意味を成さない論争に息を荒くし、がっくりと頭を垂れた。海賊船の船長とは、人の話を聞かないという資質がなければなれないのだろうか。


「呼吸が荒いな。脈も速い」
「誰のせいだ!!」


さりげなく診察を装って伸びて来た手をぺしっと叩いて追い払う。ローは気を悪くした様子も見せず、飄々と言葉を続けた。


「お前が麦わら屋達と別れて、船を降りることはない。そうだろう?」
「……分かってるじゃない」
「だったら嫁に来い」
「なんでそうなるのよ!結局船を降りろってことじゃない!!」
「そうじゃねェ」


端正な顔立ちがぐぐっと迫って来て、油断していたナミは顔を赤くしてしまう。ローは、黙っていればナミ好みの、いい男なのだ。黙ってさえいれば。


「男女交際ってのは不確かなモンだ。それが海賊同士なら尚更、次に会う約束も出来やしない。だが結婚となれば事情は変わる」
「……?同じでしょ?関係が違うだけで、状況は」
「結婚すれば」


ローは至極真面目に言い切った。


「子供が作れるだろ」
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