Book

□fever
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船長の言う通り、小さな島である。そこそこ栄えてはいるものの、これと言った名産品や特徴がある訳でも無く、長い船旅の休憩地点として人の往来がある感じ。たとえ海賊が来ても大人しく物資補給に立ち寄るのみで、略奪や戦闘とは無縁だ。そんな島にログの関係上一週間もいなければならないのだから、何かとトラブルを起こす組にはさぞ退屈だろうが、平穏を愛する気弱組には心休まる島だ。


こんな晴れた日は大物のシーツやテーブルクロスを洗ってもいいし、ウッドチェアに転がってロビンとのんびりお茶を飲んでもいいのだけれど、洗濯物はサンジ君が「おれに任せてよプリンセス」と掻っ攫っていってしまったし、ロビンは生憎本屋さんに行ったきり帰って来ない。海図の整理や航海日誌もあらかた片付けて、暇を持て余している。とは言えさっきから爆発音を響かせているウソップ工場には近付きたくないし、ゾロの鍛錬なんか見てたって面白くないし。




「………………」


だから来たのに。
ちらりともこちらを見ようとしない、私の想いびと。
そんなに医学書が面白いか!せめて一声かけてくれたっていいじゃない。


私も何も言わず、船長室の飾り気の無いベッドに飛び込んで布団を被った。
ここは安寧の場所。
あったかくて、ローの匂いがする。
ここにいる限り、愛されている、という夢を見ることが出来る。




「………誘ってんのか」


うとうとと微睡み始めた頃、小難しい本を読み終えたらしいローがようやく口を開いたので、意識が急浮上する。


誘う?
誘ったって、誘われてくれやしないくせに。


何も言わない私に、あたたかな重みがのし掛かる。まるで恋人同士のようなキスをされて、優しく触れられて、泣きたくなるくらいに愛しいのに、言葉には出せない。かたちにするのが怖い。




抗えない熱が身体中を支配し始めた頃、ローが私の首筋を見つめて、動きを止めた。
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