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□Beatrice
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頭の回転が速く、普段饒舌な男にしてはいやにたどたどしく、まるで真っ白なパズルのピースを探すように、ゆっくりと言葉を紡いでいく。
「ここにあるものは、皆、おれの為に贈られたものじゃない」
国王として。王下七武海として。その立場に、捧げられたもの。
「お前の気持ちが、………」
この黒い羽根は。
そんなに、彼の気持ちを掻き乱してしまったのだろうか。
普段の彼なら、お前の贈り物に比べたら、ここにあるものは価値が無い。全部燃やして捨ててしまっても構わない。そういう言葉を澱みなく言えただろう。
ナミには、一体何が、彼の声帯を麻痺させてしまったのかが分からなくて。
だから。
「……愛してるわ、ドフィ」
愛に飢えた子供のように、酷く傷付いた顔をする彼に、偽りの無い言葉を。
そっと囁いて、男の腰に手を回した。
「…お前は、どんな服でも似合うが」
どれ程そうしていただろう。不意に、ドフラミンゴが口を開いた。その声にはもう、先程の不安定さは感じられない。
「当たり前でしょ」
「だがメイド服はキャラじゃねェな。お前みたいな女は、男を平伏させる方が似合ってる」
「…ぷっ、なにそれ」
「黒いコートは悪くない」
「悪女キャラってこと?」
「……白い服の方が似合いそうだがな」
猫にそうするように、白く細い顎の下を優しくさすってやると、男はもう一度ナミを抱え上げた。
「……今度は純白のドレスを着てくれねェか?」
「………それ、プロポーズのつもり?」
ナミは笑って、男の少し赤らんだ耳に誕生日おめでとう、とくちづけた。
イエスとも、ノーとも言ってあげないのは、猫が思い通りにならない生き物だから。
2015年若様生誕記念
Beatrice
(喜びをくれる者)
END