Book

□Beatrice
2ページ/3ページ

「きゃっ…!ちょっと!?」


メイドコスの猫が抱き上げられて連れて来られたのは、ドフラミンゴの生誕を祝う品々を一時保管してある部屋。王宮の広い一室を埋め尽くすようにして、プレゼントが積み重なる。国王を敬愛する国民、ファミリー末端の構成員たち、ご機嫌取りの取引相手。様々な思惑が、皆一様に余所行き顔で、リボンを纏って箱に納まっている。


「…すっごい量ね」


女の子なら一度は憧れる、部屋中の贈り物。ナミは呆れながらも、ほう、と感嘆の声を漏らした。同時に少し恥ずかしくもなる。これだけの量のプレゼントの前では、借り物の服で装った自分など、きっと霞んでしまうから。




ドフラミンゴは左腕にナミを抱えたまま、右手で服の内ポケットを探った。
出て来たのは、赤錆びた小箱。
鼻につく古いオイルの匂い。かなり長い間、使われていなかったのだろう。


小さく灯った火が、ドフラミンゴの顔を照らす。まだカーテンを開けられていない、薄暗い部屋に複雑な影が生まれて、押し黙ったまま何を考えているか分からない男の表情に不安になったナミが、それは何、と声を掛けようとしたとき。
ドフラミンゴは、そのライターを、




投げた。




「…なっ、にしてるの!?」


男の腕から慌てて飛び降りたナミは、丁度近くにあったクリスタルの花瓶を火元に放り投げた。幸いライターの火は、二、三個のプレゼントの箱やリボンの端を焦がしただけだった。


「何やってるの!折角もらったプレゼントを燃やす気!?火事になったらどうするのよ!!」


ドフラミンゴの様子がおかしい、と思ったのは、ナミが咎めるように大声を上げても、不思議そうに、そして何処か困ったように、眉根を寄せるばかりだったからだ。


「………燃えちまっても、いいと思ったんだ。全部」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ