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□Beatrice
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抱き上げようとすれば、
にゃあと鳴いて、するりと逃げる。


猫とは、そういう生き物だった筈だ。




「………その格好は?」


思わず怪訝な声が漏れ出てしまったのも無理はない。目の前に立つのは、可憐な花のごとき乙女。この国を統べる王が、その寵愛を惜しみ無く傾ける、唯一の存在。


「……ここのところ王宮にあんなにプレゼント運び込まれといて、まさか自分の誕生日に心当たりが無いとか言わないわよね」


彼女はいつも自由。擦り寄ってみせることは有っても、男に媚びるような真似はしない。そう、誇り高き猫のように。
ナミのそういうところが、ドフラミンゴの庇護欲と加虐心を煽って止まない。愛したい、振り向かせたい、苛めたい。笑顔も泣き顔も、何もかもが愛おしい。そんな感情を自分に植え付けてしまった、罪深き女。
そんな彼女が、今日は。


「ドフィのクローゼットの一番奥に、いつものと色違いのファーコートがあったわ。可愛いなと思ったんだけど、いくらなんでも大き過ぎたから、私サイズに新しく作ったの。お揃いよ?……それだけだとつまらないから、ベビー5にメイド服、………借りたの」


メイド服と言えば黒が定番だが、彼女のものはマゼンダの布地に白いフリルが華々しい。ナミはそこに黒のガーターベルトとリボンを合わせて、鮮やかなオレンジの髪が衣装と喧嘩をしないように可愛らしく纏め上げている。
その上に、真っ黒な羽根のコートを引っ掛けて。


「…誕生日くらい、『あなたのもの』っぽい格好してあげても、いいかと思ったのよ」


ふん、と鼻を鳴らして、そっぽを向く猫。見えない尻尾をゆらゆらと揺らして。らしくなく頬を朱に染めて。




ーああ、猫とは。


いつも予想を裏切ってくれる、


最低で、最高の、生き物だ。
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