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□オルゴール・ナイト
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「小娘は寝たか?」
「ええ、今しがた。大分疲れているようだったから、きっと朝までぐっすりよ」


ナミが寝ついた深夜のダイニングに、ナミ以外のクルーが全員集結していた。手にはそれぞれこの日の為にこっそり用意した、色とりどりのパーティ用の飾り。


「しかし、折角のナミさんのお誕生日だってのに、ひでェ天気が2週間も続くとはな。おかげで盛大に祝う筈のパーティが、ろくろく準備も出来てやしねェ」
「ヨホホ、ですがナミさんのお誕生日前日に荒れ狂う海域を抜けたのは奇跡ですよ」
「おいチョッパー、平気かお前?」
「…ねむく、なんかないぞ!ナミの誕生日の準備するんだ!」
「おーし、とにかく、最後の飾り付け始めようぜ!おれ様のアーティスティックな才能の見せ所だ!」
「おれは明日の料理の仕込みをする。お前ら頼んだぞ、ナミさんが寝てらっしゃるんだ、静かにな」
「おーーー‼︎‼︎‼︎」
「うるせェルフィ!静かにやれ‼︎」




珍しい静けさがサニー号を包む。
ちょきちょき。
ことこと。
こそこそ。
控え目に響くのは、紙吹雪を切るハサミの音。それから鍋を火にかける音と、時々ウソップとフランキーが飾りの配置について意見交換して、ルフィたちに指示を出す声。


ちょきちょき。
ことこと。
こそこそ。
ちょき……。


たくさんの手を生やして、一人紙吹雪の作製に勤しんでいたロビンの手が止まった。


「……あのコ、夜中にうなされることがあるの」


ぽつりと落ちた声の主を、14の瞳が見つめた。(正確には11だが、一人は隻眼で、一人はそもそも瞳が無いから)


「ルフィ、あなたが消し去った悪夢の残滓は……まだ、ナミの心の奥にあって、時々現れては、彼女を苦しめているわ」
「そうか……」
「「「……………」」」
「おれ、毎日幸せだ」


唐突に呟かれた船長の言葉に、皆が首を傾げる。


「おれ、お前らと冒険出来て、毎日本当に幸せだけど……やっぱり時々、エースのこと思い出して、辛くなる。でも、お前らがいるから、毎日笑顔でいられる。辛いのも悲しいのも全部おれの一部だけど、お前らといると笑っていられる」
「「「………」」」
「……ナミも、そうだといいな」


らしくなく気弱に笑ってみせたルフィを包んだのは、皆の優しい微笑みだった。


「たりめーだ!明日ナミが起きてきたら、絶対笑顔になるに決まってる!」
「ウソップのプレゼント見たら、きっと喜ぶぞ!おれ、頑張る!」
「うし、じゃあ後少しだ!野郎ども、スーパー派手に飾り付けてやろうぜ!」
「「「おォォーーー‼︎‼︎‼︎」」」
「だから静かにやれって!」
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