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□A困惑
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呼ばれた名前にぴくりと肩を震わせて、ナミは依然敵意満載の瞳でドフラミンゴを睨んだ。


「私もあなたを知ってる…王下七武海、ドンキホーテ・ドフラミンゴ。あなたのヒューマンショップに戻らないわ!」
「…あァ?」


ドフラミンゴは首を捻った。どうやらこの女は、あのオークションの主催者を自分だと思い違いをしているらしい。


「あのな、あれは違、」
「とぼけないで!あなたが”ジョーカー”の通り名で裏社会を牛耳ってることは知ってる……‼︎シャボンディ諸島でも人身売買を取り仕切っていたじゃない!」
「………確かにそうだが」


肩を竦ませて、ひょいと指を動かす。すると弾かれたように立ち上がったナミが、自分の意思とは裏腹に足を動かして、広いベッドにぽすんと腰を下ろす形となった。


「いや、なに、」
「いいか、確かにおれはそういう商売に手を出しちゃいるが、今回お前を攫って売り飛ばそうとしたのは別の輩だ。おれは視察でたまたまあそこに来ていただけで、逃げ出したお前を取っ捕まえて元のヒューマンショップに戻そうなんて思っちゃいねェ。そんな面倒なこと誰がするか」


別に詳しく説明してやる義理など無いのに、目の前の女を少しでも安心させてやりたいなんて、何故思ったのだろう。
ドフラミンゴは話しながら、なんだか可笑しな気分になった。


「現におれはお前の首輪を外してやったんだぞ。…それに」
「きゃあッ⁉︎」
「何もしねェって。怪我の手当てをするだけだ」


ドフラミンゴが華奢な白いドレスを引き裂くと、顔を強張らせて下着を纏うばかりとなったナミの身体には、酷く手荒に扱われただろう痕が其処此処に見受けられた。


「随分だな…お前、相当暴れただろう」
「大人しく売り物になんてなる訳無いじゃない」


仮にも商品にこんな怪我を負わせて、平気な顔で売りに出そうとしていた人間屋に呆れると同時に、私は海賊よ、と強気に唇を尖らせてみせたナミに、ドフラミンゴは思わず笑い声を上げた。


「フッフッフッ!気の強ェ女だ」
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