Book

□回遊魚の反乱
2ページ/7ページ

「…お前、麦わらの一味の”泥棒猫”じゃねェか。”天候の魔女”、”天才航海士”……色々噂は聞いていたが、まさかローの女だったとはなァ」


ぺろり、と長い舌が唇を潤す。それは、面白いものを見つけた時の彼の癖だ。
ー狩りが始まる、合図。


「殺すなんて勿体無ェ……暫く退屈しなくて済みそうだ。『何でもする代わりにローを殺すな』……フッフッフ、感動的だなァ…その条件、呑んでやろう」
「待て…!ドフラミンゴ‼︎」


ナミの顎を掴んで無理に視線を合わせていた男は、思い出したようにローの方を見遣る。


「汚ェ手で、ソイツに触んじゃねェ…!」
「”弾糸”」


弾丸状に発せられたおよそ糸とは思えぬその凶器は、容赦無くローの肩を抉る。


「ぐあァァァ‼︎‼︎」
「ローーー‼︎」


弾かれたように走り出そうとしたナミの身体は既に別の形状の糸によって囚われていて、愛しい男の傍に寄ることは叶わなかった。涙の滲む瞳で、強くドフラミンゴを睨みつける。


「おっと、お前はもうおれに逆らえねェ筈だぜ……少しでも反抗的な素振りを見せたら、ローはこのまま死ぬ。…こんな風に」


ローの近くに倒れていた、ドフラミンゴの部下の首が飛んだ。
まだ辛うじて息があった筈のそれは、信じられないという表情を作って、どさ、とナミの前に落ちた。
点々と飛び散った血が、ナミの美しい顔を汚して、血の気の引いた蒼白な肌に新たな彩りを添える。


「…殺さないって、言った……!」
「ああ、約束通り、ローは殺さねェ……お前がおれの元に来るなら。もう、このガキの所へは戻れねェが、それでいいんだな?」
「ナ、ミ……ソイツの、話を、聞くな……逃げろ…!」
「お前が、この女の覚悟を無下にするのか?なんなら今お前の目の前で、コイツを犯してやってもいいんだぜ?」


あからさまに悪趣味で、しかし効果的な脅迫に顔を強張らせたナミの耳朶を舐るようにして、わざと優しい声を掛ける。


「お別れを言ってやれよ」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ