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□B
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「ナミさんも昼飯食ったかなァ……おれの(作る飯)じゃねェと満足出来ないカラダなのに……」
「サンジ、括弧内もちゃんと喋れよ。誤解を招くだろ!」
「向こうへ行ってから、丁度三日経ったことになるわね」
「こんだけ近くに停泊してんだ、記憶が戻りゃすぐ連絡寄越すだろうが……」
「……」


航海士を欠いた日常は、まるで世界が色褪せたかのようで。海の一流コックが作る料理ですら、なんだかいつもより味気ない。
何の進展も望めないなら、ナミをローの船に置いたままにしておく意味はないんじゃないかと思う一方で、今連れ戻したら永遠に記憶を取り戻すきっかけを失うのではと、それぞれが思いつつも声には出せないでいた。




サニー号には似合わない沈黙が続く中、一人の男が立ち上がった。


「おや、ゾロさん。どこかに行かれるのですか?」
「ーーああ……ケリを、つけにいく」


男の覚悟を示すように、三本の刀がかちゃり、と鳴いた。


「ブルック、いいんだ。おいゾロ」


何か問題でも、と続けようとしたブルックを制止して、ルフィが真剣な面持ちで剣士を見上げる。


「アイツを泣かすようなことはすんなよ!」


そう言ってにかりと太陽のような笑顔を見せる船長に、ゾロはフッと口角を上げた。


「……泣かせたとしても、今回で最後にする」




「オイ、今なんかすげェゾロが男前に見えたぞ……!」
「馬鹿野郎、アイツは元々スーパー骨のある男だぜ」
「え?呼びました?」
「ふふ……もしかしたら、今のうちに包帯や消毒液を沢山補充しておいた方がいいかもしれないわ、チョッパー」
「え?なんでだ?誰か怪我する予定でもあんのか?」


ゾロの行く先に心当たりのある者が静かに笑みを浮かべる一方で、よく分かっていない者たちはただただ困惑するばかりだ。にわかに騒がしくなった船内で、サンジは空になった煙草の箱をくしゃりと潰して、小さく笑った。


「ーーさて、ウチの野獣に、お姫様を奪還出来るかねェ?」
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