Book

□B
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「そろそろ早期教育の手配をするか」
「教育って……ロシーはまだ三ヶ月なのよ?」


ドフラミンゴが子供好きだった、というのは意外だった。こんな凶悪な面構えの男が、息子に泣かれると少し落ち込むなんて、誰が信じるだろう。でも、ベビー5も、小さい時からドンキホーテファミリーに入っていて、ドフラミンゴが親代わりみたいなものだって言ってたっけ。


泣き止まないロシナンテをあやすドフラミンゴを見て、ナミは思わず微笑んでしまった。最近、そういうことが多い。決して心を許してはいけない、憎むべき相手なのに、負の感情を保ち続けるのはこんなにも疲れてしまう。
ナミはきゅ、と唇を結ぶと、自室に戻ると言って部屋を出た。


子供を授かって尚、未だ気高く自分に媚びない女を、ドフラミンゴは濃いサングラスの奥からじっと見つめていた。




そういえば図書室に、読みたい本の続きがあったんだっけ。
産前産後の体調は万全ではなく、必要なものは頼めばすぐに枕元に届く生活が続いていた。たまには自分の足で本を取りに行こうと、ナミは目的地を変更した。
重い扉が音も無く開いたことに、かすかな違和感を覚える。図書室の扉はもっと錆付いていて、開閉に嫌な音を伴う。ああ、ここは隣の部屋か。王宮の部屋の扉はどれも同じ様で、久々に来たら間違ってしまったみたい。


話し声がする。ナミには気付いていない、ドフラミンゴの部下たちの声。


「…にしても、若様も変わったよなァ」
「ああ、最近は随分大人しくなっちまったもんだ」
「嫁と息子が出来るとそうなんのかね」
「息子といえば…なんであんな名前、付けたんだろうなァ?」
「ー自分が殺した、実の弟の名前を」








ー今、


何て言った?
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