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□A
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ナミは広い王宮の庭で、はぁ、と白い息を吐いた。


「…姫、風邪を引いては大変です。若が心配なさいますよ」
「グラディウス……お願い、もう少しだけ」


一人になれるのは、ドフラミンゴがいない時の、王宮の中だけ。庭に出ることは許されていたが、それも必ず幹部が一人以上、付き添わなくてはならない。監視の目があるのは嫌なものだが、どのみち逃げ出せないのなら、少しでも外の光や風や匂いに触れていたかった。


ナミの警護に当たるのは大抵はベビー5だったが、交代でバッファローかグラディウス、稀にデリンジャーが付いた。話し相手には年の近い方がいいだろうという、ドフラミンゴの配慮だろうか。
しかしドフラミンゴの忠実な部下であるグラディウスは、冷たい風に当たっていては良くないとうるさいので、仕方無く戻ることにした。本当に具合が悪くなって、もし彼が怒られたら、少し気の毒だから。


不意に、地面が揺れた。


「姫⁉︎」


響いた焦り声に、揺れたのが大地ではなく、自分の身体だと気付く。へたりと座り込んだナミは、妙なゴーグルとマスクに覆われた、多分その下はとても慌てているであろうグラディウスの顔を、ぼんやりと眺めた。


「だから言わないことじゃない、具合を悪くされたのでは⁉︎」
「…いえ、ちょっと目眩がしただけ…ごめんなさい」
「キャー、姫様、どうしたの?」

騒ぎを聞きつけたのか、デリンジャーとベビー5が走って来た。


「姫様、また…この間も熱を出したじゃない!最近、食欲も無いようだし…!」
「ごめん、ベビー5…やっぱり、風邪引いた、のかな」
「すぐ寝室に行きましょう!デリンジャー、姫様を運んであげて。グラディウスがやると後で若様が嫉妬するかもしれないから」
「キャー!りょうかーい!」
(な、何故おれはダメでデリンジャーならいいんだ…!)


おろおろするグラディウスを置き去りにして、デリンジャーはハイヒールの音を高く響かせ、ナミを寝室へと運んで行った。
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