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□A
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人間の食欲を一番そそる色は、オレンジ色だと言う。
だからだろうか、この女を見ると、腹の底から耐え難い程の衝動が湧き上がってくるのは。


「や、もう、むり」
「何言ってんだ、まだ三回目だぞ」
「…ドフィ、の、おっきくて、…くるしいの」
「………お前それ、天然で言ってんのか…恐ろしいな」


ますます外に出してやれねェ。


意図せずに男の欲を煽ったナミは、激しさを増した揺さぶりに翻弄されて、耐え切れずに意識を手放した。




窓の外には、静かに雪が舞い降りて。ナミをここに閉じ込めてから、季節は過ぎて、間もなく半年になろうとしていた。


自分がこれ程長い間、一人の女に執着したことがあっただろうか。
世界にその名が知れ渡る海賊、王下七武海、また一国の王ともなれば、抱いてと寄ってくる女など掃いて捨てる程いる。しかしドフラミンゴは、ナミを連れて来てからというもの、王宮にあれ程侍らせていた女たちに一斉に暇を出していた。それは世界を破壊しようとまでしている男の衝動ーー”寵愛”を、ナミが一身に引き受けることを意味した。


何度抱いても飽きの来ない身体はすっかり従順になっていたが、心は決して許してはいないことを、ドフラミンゴは分かっていた。それが面白くて、自分がナミに固執する要因の一つであることも理解していたが、反面歯痒くも思っていた。男なら誰だって、惚れた女の心は掴みたい。いくら世界一気高い血筋を持つ男でも、そういう意味ではただの男。




抱く時以外、殆ど感情を示さない姫は、ごく稀に笑顔を見せた。
温室の花が咲いたとき。
庭園に迷い込んだ傷ついた小鳥が、治療を終えて再び空へと飛び立ったとき。
ドフラミンゴが、山のようなドレスや宝石の土産のついでに、気紛れに拾った貝殻を渡したとき。


許される訳は無いし、許してもらうつもりも無い。それでも、時折不意にもたらされる花のほころびのようなその笑みは、倍も年上の男の心を乱すのだった。
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