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□気高き花を手折るように@
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逃げなきゃ、もしくは逃げられるか、なんて考えた訳じゃない。
頭よりやや遅れて状況を把握した身体は、この危機から逃れようと、勝手に暴れ出したのだ。
だが些細な抵抗は、実に呆気無く止められた。男の謎の動作ーー先程、仲間たちをいとも容易く切り刻んだ、その指の動きによって。
「大人しくさえしてりゃあ悪いようにはしねェよ」
仲間を傷付けておいて、私を攫っておいて、どの口がそんなことを言うのか。
ナミはかたかたと細かく震える身体をどうにか宥めて、ドフラミンゴを強く睨みつけた。
「フッフッフ、生意気な女は嫌いじゃねェ……そういう女を、ねじ伏せるのも」
ゾクゾクするぜ。
口元が、凶悪なまでに歪んで。
そのまま、ナミの唇に被さった。
「……ん、ふぅ…!ん…!」
重ねられた唇からすぐに舌が割り入れられて、味わうかのように口内を蹂躙される。
くぐもった声が室内に低く響くが、その音の無い叫びを完全に無視して、ドフラミンゴはたっぷりと時間をかけてナミの口内を堪能した。
長い長いくちづけが終わって、漸く解放されると、ナミは足りない酸素を求めて必死に呼吸をした。
「ハァ…、ハァ……!」
「…あァ、悪ィな…年甲斐も無く夢中になっちまって。あんまりお前が可愛いんでな」
お前も良かっただろう?
にやにやとそんな戯言を吐く男に、ナミは荒い息を吐き、やっとの思いで声を絞り出した。
「だ、れが……そんなわけ…!」
「そう強がるな。甘い吐息で、目を潤ませて、頬を染めて、
ーそんなカオされて、欲情すんなって方が無理な相談だ」
着ていた服に手をかけられて、ナミはこれから襲い来る恐怖に、声も出せず慄いた。