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□火を見るよりも明らかに
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エースはどうにも落ち着かない気持ちを、酒杯を重ねることで紛らわしていた。


宴は楽しい。
愛してやまない弟と、気の良いその仲間たちと飲む酒は格別だ。
コックの作る料理も文句無しに美味い。


が。


そのコックが、どうもナミに馴れ馴れしすぎる。




コックが野郎どものことは二の次にして、常に女性陣の世話を最優先事項にしていることはよく知っていた。しかし今日は、いつも等しく愛を注いでいる筈のロビンには殆ど近寄らず、ナミにつきっきりのような気がするのだ。甲斐甲斐しく料理を取り分け、すぐ隣でシェイカーを振り、さっとドリンクを差し出して、飲み終えたグラスは即撤収。まるで専属執事だ。


「なァ、ルフィ…あいつらいつもあんな感じか?」
「んあ?ナミとサンジのことか?ああ、サンジはいつもナミにべったりだぞ!」
「ふーん…」


じっと見つめていると、視線に気付いたコックの口元が、にやりと歪んだように見えた。


「……?」
「なんか焦げ臭ェな…ってエース!ちょっと燃えてるぞ!サニーを燃やすなよ⁉︎」
「うわ!マジだ!すまん」


ぷすぷすと音を立てるエースに、隣に座るウソップが笑った。


「なんだよ、ヤキモチか?」
「ヤキモチ?」
「おいおい、自覚無しかよ…」
「モチ?餅もあんのか⁉︎」
「ルフィ、ややこしいからお前は黙ってろ。…あー、なあルフィ、サンジがこないだナミに言ってた台詞覚えてるか?」
「あー、ナミと結婚したらどうのって話か?」
「ぶほっ!け、け、け、結婚?結婚ってどういうことだよ‼︎」
「おれ、覚えてるぞ!」


得意気に話に割り込んできたチョッパーが、ウソップの膝にぽすんと腰掛けた。


「『ナミさんと結婚したら、ナミさんそっくりの女の子が欲しい』って言ってたなー」
「いきなり子供の話⁉︎」


あいつら、そういう関係なのか?
子供を前提にした結婚を前提にしたお付き合いなのか?


「…エース、弱火から中火になってきたけど、大丈夫か?」
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