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□プレシャス・ファミリー
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「ベビー5、バッファローが探していたぞ。モネ、パンクハザードの報告書はどうした?シュガーお前、トレーボルの傍から離れるなと言ったろう」
”若様”の指令とあらば従わない訳にはいかない三人が、すごすごと部屋を出ようとした時、ドフラミンゴはもう一度彼らに優しい声をかけた。
「ベビー、モネ、シュガー…お前らは大事なおれの”家族”だ。家族に順位はつけられねェだろう?」
三人がみるみる笑顔を浮かべ、足早にそれぞれの目的地へと向かうと、ドフラミンゴはナミの座るソファにどかっと腰を下ろした。
「…最初から聞いてたんでしょ、盗み聞きなんて趣味悪いわね」
「フッフッ!まァな」
「上手くあしらっちゃって…さすが皆の”若様”ね?」
「…なんだ、ヤキモチか?」
そんな訳ないでしょ、と眉を顰めたナミの頭を愛おしげに撫でたドフラミンゴは、ひょいと彼女を抱き上げた。ナミの手から厚い本が落ちて、紙が潰れる音にも構わずに。
「お前も家族になるか?」
「…ドンキホーテファミリーの一員なんて、御免だわ」
「フッフッフッ!素直じゃねェな、家族になってアイツらと同列になるのがイヤなんだろ?」
「そんなんじゃっ…!」
もう、本が皺になるわ。
そんなことに気を取られるふりをするナミの肌が、触れた所から段々と熱くなっていくのを感じて、ドフラミンゴは一層笑みを深くした。
「”ドレスローザの王妃”の席でも、不満か…?」
「ーっ!」
ナミの視線を逃がさぬように、顎を掴んでこちらを向かせる。
「もう一度訊く。おれの家族になる気はねェか…?」
唇と唇が重なる直前で囁かれた言葉は、まるで砂糖菓子を直接耳に入れられたかのように、甘く、溶けた。
「…結納金と指輪の額次第で、考えてあげてもいいわ」
本当に素直じゃねェなァ、と愉快気な男は、痛くも痒くも無い仔猫の戯れのようなナミのパンチを、いつまでも笑って受け続けていた。
プレシャス・ファミリー
(ようこそ、”家族”へ)
END