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□プレシャス・ファミリー
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「「「若様に一番気に入られているのは、私だと思うの」」」


「…はあ?」


突然部屋にやって来て、寸分違わぬ台詞を捲し立てた三人に、思わずナミは間の抜けた声を出した。




「だって私、必要とされてるもの!いつも任務を任せて下さるし!」
「…SAD製造のような重要な任務こそ、私が若様の優秀な部下である証。ベビーの仕事はいつも誰でも出来るようなものじゃない?」
「モネ!あんた…それ以上喋ったら生かしちゃおかないわよ‼︎」
「若様はそのイトイトの実の能力で、他人を操ることが出来る…それに対して私は玩具にした者の記憶を、他の人間から消し去ることが出来る…二人揃えば最強で、無敵。私が一番若様に相応しいわ」
「「子供は黙ってて‼︎」」


目の前で繰り広げられるまるで痴話喧嘩のような会話の喧しさに、ナミは頭痛を覚えた。
折角一人で、ゆったり本を読む優雅な午後の時間を満喫していたというのに。


正直どうでもいいんだけど…あの男にとって誰が一番なのか、なんて。


「ねえ、ナミはどう思う?」
「絶対私よ!若様は私の婚約者を8人も消しているのよ?もうこれって嫉妬以外の何物でもないわ‼︎」
「本当に若様を想うなら、なんでよそに婚約者なんか作るのよ」
「若様を慕う気持ちなら負けないわ…彼の外套に、時々自分の抜けた羽根をピンクに染めて、縫い付けてるの。いつでもお傍に居られるように」
「…モネ、気持ちわるい。死んで」


…もう、私には話しかけないで欲しい。
延々と続きそうなこの話題は無視を決め込むことにして、読みかけの本の頁を捲った。冷めた紅茶を啜ろうと、カップを手に取った、その時。


「…?」


ぴたり、と会話が止んだのを不審に思い、思わず顔を上げる。三人が見ている方向に、つられて視線を送るとーー




話題を攫っていたその張本人が、いつものえげつない笑みを浮かべてこちらを見ていた。
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