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□モノクロの猫
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牙が遠ざかる一瞬の油断の隙に、ずるりと深く埋めた自身は、たちまち小刻みな痙攣に包まれる。
望まぬ絶頂を繰り返した身体は、挿入の刺激だけでまた快楽を追って踊り出すのだ。


痛いだろうか。
ちらり、医者としての良心が顔を覗かせる。散々傷を負わせたくせに。
女にとって、愛情を伴わずに続くこの行為は、目先の快楽だけに溺れられるようなファンタジーではない。
だが、


「ぁ、あ、やぁっ」
「ーー気持ちいいか、ナミ」


壊れた人形のように揺さぶられるままのこの女を、追い詰めているのは自分だ。
深く咥え込まれた場所から、交じり合った愛と精が、許容量を超えてシーツに染みを作る。
そんな光景に、また愉悦を覚えずにいられない。


押さえつけていた女を軽々と抱き上げて、向かい合う体勢を取った。自分の重みでより深く刺さる熱いモノに、女は快楽と苦悶の入り交じった声を出す。


「もう、麦わら屋の船には帰れねェな」


同盟は解消されるだろう。
殺し合いになるかもしれない。
おれの腕に抱かれた、瞳の色を失ったお前を、あいつらが見たら。


「こうするしか、ねェんだ」


他にどんな方法があった?
愛しいこの女を、他所の船の航海士を、繋ぎ止めておく為には。




色の無い、ただ痛みと快楽だけに支配される世界にお前を堕とした報いならいずれ受けよう。


何も映らない瞳に、せめて自分の影が落ちるように。
そっと、白い頬を、撫でた。





モノクロの猫
(始めからやり直せたら、その瞳に色は戻るのか)





END
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