Book
□Kidnap!
2ページ/2ページ
「失礼します!クザン大将…ハァ、ご所望の、書類を、お持ちしました…!」
「あらら、スーパーボインのおねェちゃん。息急き切ってどうしたのよ?」
「ナミですっ!いい加減覚えてください!」
海軍本部の大将に与えられた執務室。明日の会議資料です、と書類の束を突き出すと、青キジと呼ばれる男はポリポリと頭を掻いた。
「あー、頼んでたっけ?まァいいや、それにしても、」
えれェの引き連れてんじゃないの。
自分と先輩たちの努力が完全に無駄扱いされ、ナミががっくりと肩を落としたその後ろで、ドフラミンゴはそうかナミと言うのか、などと呟きながら、ゆったりと歩を進めた。
「フッフッ!久しぶりだな、青キジ」
「あんた何でこんな所に…あー、今日アレか、そういえば。おつるさんが言ってたような…」
「わざわざ足を運んで来たんだが、何の収穫もなく帰るところでなァ?…廊下に落ちてた、仔猫を拾ったもんでね…」
その仔猫って、もしかしなくても。
「あらら、ボインちゃん、面倒な奴に見つかっちゃったねェ」
「私ですかーっ!?」
「丁度、ペットを飼いたいと思ってたところでなァ」
クザンの部屋に入ってからというもの、どうにかドフラミンゴの存在を無視し続けてきたナミも、流石にその発言は流せなかった。
「ペぺぺペット…!?」
「いくら七武海でも、許可されてるのはアレだけだぜ?あー…アレだ…忘れた」
「未開の地及び対海賊相手限定の略奪行為のみ、です!」
「海兵なら七武海の安全を守らなきゃならねェだろ?」
「あー、護衛業務ならアリか…」
「ナシですよっ!!」
ぷるぷるぷる。
「センゴクさん?あー、忘れてました…はい。……おれは呼ばれたんでなァ…ま、頑張りなさいよ」
「ちょ、大将!待っー」
バタン。
のんびり屋のクザンも、電伝虫越しにも相当ご立腹の様子の元帥に流石にマズいと思ったのか、ナミはドフラミンゴごと部屋を追い出された。
「…ああいう上司を持つと大変だな」
「分かって頂けますか…?」
ナミが思わず瞳を潤ませてドフラミンゴを見上げると、男は大きな掌を口に当てて視線を逸らした。心なしか耳が赤い。
「…?」
「……やっぱり、飼うか」
「きゃあぁっ!?」
肩にひょい、と担がれるナミ。
「ちょっと!降ろしてー!」
「静かにしてろ…なんなら、唇を塞ぐのを手伝うか?」
「ッ!!」
ばさり、大きなもふもふを翻し、ドフラミンゴはナミを担いだまま窓から飛び出した。みるみる地面が離れていく。
「そうだな、まずは…首輪でも用意するか」
「ぃやー!!!」
ナミの叫びは澄み渡る青空に飲み込まれてーー
一見平和なドレスローザの街並みで酒の肴にのぼる、いたって平和な話題。国王様は近頃拾った仔猫に夢中、珍しい毛色のそれは、たいそう愛らしい声で鳴くそうな。
Kidnap!
(誘拐ですー!海兵さーん!って私だー!!)
END