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□新たな未来へ
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遠く水平線の向こうに、彼の姿を見た。
あの日、頂上戦争の終結を告げる新聞を読んだ時。何を想って泣いたか。


船の仲間を失った中で一人、闘わなければならなかったルフィを。

命に代えても護りたかった筈の兄を目の前で殺されたルフィを。

そんな時、傍にいてやれなかった自分を。

船の仲間には到底言えず、密かに想っていたルフィの兄を。

想いが通じ合った夜を。

何度も求め合った日々を。






未だ流れ出る涙を止められないのは、彼の全てが色濃くこの心に残るから。そばかすだらけの顔いっぱいに広がる笑顔で、鍛え上げられたその肉体で、優しく髪を掬い取ってキスを贈る唇で。エースは体全体で、心で、何気ない動作で、溢れんばかりの愛をくれたから。









いつの間にか隣に立つ影に気付いて、慌てて涙を拭った。恐る恐る視線を送ると、不機嫌な顔をいつも以上に不機嫌にして、海を見つめる男。


ああ、エースより少し背が高い。彼はその場を華やかにする笑顔を持っていたけど、この人はその場をお葬式みたいにしてしまう。





「おい、お前今失礼なこと考えたろ」
見透かされたようでビクッと肩を震わせる。
溜息を吐きながら一歩距離を詰めた男は、ナミの肩を掴んで引き寄せる。


突然のことに、ナミは目を白黒させるばかりで、言葉を出せなかった。否、出そうとした言葉はー









そのまま、ローの唇に飲み込まれた。




「⁉︎」
「おれが」

「おれが、お前の傍にいてやる」





へ。
思わず間抜けな音が出た。
目の前の男を見る。
隈に彩られたローの鋭い目が、怒っているようにも、泣きそうなようにも見えた。



「おれは死なねェ」


抱え込まれたナミの頭は、そのまま長身の男の胸に埋められた。
「お前を守ってやる。傍にいてやる」
ローがどんな顔で今そんな歯の浮くような台詞を喋っているかは、ナミには分からない。
「おれを踏み台にしても良い。忘れられなくても良い、だがお前が足を止める時には」


おれが手を引いてやる。












彼への想いを心に湛えたまま、この男の手を取っていいのだろうか。






答えは直ぐには出せそうにない。
けれど。



似ても似つかぬ二人が重なって笑った。それは願望かもしれないけども。
差し出された手の上に、新たな未来が見えたような、気がした。







新たな未来へ
(いつか、きっと乗り越えられる)





END
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