Book2

□愛欲確率論
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男四人が顔を突き合わせて正方形の卓を囲んでいる、となればおおかた麻雀と相場が決まっているけれども、生憎今積まれているのは牌ではない。カードだ。それも遊戯用ではなく、至極真剣な占い用の。


「……おれも、25%だ」


空中にぺたりとカードを貼り付けて、導き出された運命が厳かな声音で告げられる。冷静な面持ちを崩さない人物を囲む残りの三人は、嘘だろ、そんなことあるのか、と驚嘆し、魔術師に詰め寄った。


「嘘ではない……おれも、お前たちも、等しく25%だ」


魔術師ことバジル・ホーキンスが嘘や冗談の類を好まないことを、他の三人ーーサンジ、トラファルガー・ロー、ディエス・ドレークーーはよく知っている。だからこそ絶望に天を仰いだ。


25%。
それはあまりにも低い。四分の一と言えばなんとなく多い気もするが、降水確率だとしたらほぼ雨は降らない。
麦わらの一味の航海士、ナミと結ばれる確率としては、なんとも心許ない数字である。


「っつーかなんで全員一緒なんだよ!?ナミさんと同じ船に乗ってるおれと、敵であるお前らが同じ確率なんておかしいだろうが!!」
「有利な条件を活かしきれてないってことだろ」
「しかしどうするのだ、これでは埒があかない」


吠えるサンジをローが茶化して、ドレークはただ頭を抱える。
そもそも敵であるこの四人が共に座して占いに興じる羽目になったのは、ひとえに同じお宝を狙っているからに他ならない。海賊らしく奪い合うのもひとつの選択肢だったが、ひょんなことから全員が同郷であると知り、妙な連帯感が生まれてしまってからは引き返せなくなった。好戦的な性質を持つ者がいなかったのもその空気を助長し、何故かホーキンスがそれぞれの恋が成就する確率を占い始めたのだった。


「なあー……25%って四人分足すと100%じゃね?」
「足してどうする」


恋は残酷だ。誰か一人が突出して可能性が高いなら、残りの三人は迷いなくそいつを潰すだろう。だが、全員同じ、それも著しく低い確率では、誰を潰すのも無意味だ。海賊が恋占いなど、と鼻で笑い飛ばす気力も湧かないほどの、結構深刻なダメージ。
ぐだぐだな雰囲気が漂い始めた中、ただ黙々とカードを空中に配置していたホーキンスが鋭い目をかっと見開いた。


「……四人足並みを揃えると吉。争いは厳禁、そしてこの女帝のカード。これは……」
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