Book2

□E憂鬱
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ードンキホーテ・ドフラミンゴもまた、憂鬱だった。


「ナミも、うちのファミリーに入ればいいと思うの」


ある日、あの一件以来すっかりナミに懐いてしまったシュガーが、細腕いっぱいにフルーツと焼き菓子を抱えてやって来た。膨大な量の書類をさばいていたドフラミンゴと、傍らで暇潰しに読書をするナミの間にするりと割り込んで(こんなことが許されるのはシュガーだけである)、それぞれに持参の品々を勧めると、自分はいつものグレープを頬張りながらの発言であった。


「………は?」
「………え?」
「だってナミの天候と航海に関する知識と技術は絶対若様の役に立つし。ナミは綺麗だから、若様のお傍でも見劣りしないし。正直幹部クラスの強さはないと思うけど……私が守ってあげてもいいし」


1割ツン9割デレで、いかにも名案!とばかりに話を進める幼女に、ナミは困ったように肩を竦めた。ドフラミンゴはそれを見て、言い知れぬ動揺を感じた。


「……コイツは、麦わらの一味の航海士だぜ」
「なによ若様、そんなの百も承知で連れて来たんでしょ。欲しいなら奪っちゃえばいいじゃない海賊なんだから。王下七武海の名が泣くわよ意外と男らしくないわね」


ファミリーに入れば懸賞金が消えて楽よ、この国は食べ物も美味しいし過ごしやすいところよ、毎日贅沢な暮らしが出来るわよ、さりげなくドフラミンゴに毒を吐きつつセールスポイントを並べたシュガーは言いたいことだけ言って、それじゃあお邪魔しましたと消えた。


「…………」
「…………」


正直、考えなかった訳では無い。
ファミリーに入れるところまではいかなくても、このまま、彼女をここに留めておけないかと。
だがナミが、毎日経過を見に来る医者に、いつ治るかいつ海に出られるかとそればかりを尋ねているのを知っているドフラミンゴは、消化し切れない感情に頭を悩ませていた。
欲しいものは奪い、邪魔するものは切り捨てる。そんな単純なことが出来ない自分が不思議で。


何も言い出せずに、また細かい文字を目で追う作業に戻った。
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