Book2

□向日葵
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「なんっでテメェみたいな女心の欠片も理解出来ねェような輩が、あんな美女に好かれるんだよ⁉︎」
「はからふぃふへぇって(だからしつけェって)」
「落ち着けサンジ!何度その話を繰り返したら気が済むんだ⁉︎」
「ヨホホホホ!本当に目も眩むばかりの美しさでしたね、海賊女帝さん……あ、私目無いんですけど!」




「………いたっ」
「可愛い顔が台無しよ?」


知らず眉間に深く寄っていた皺をぴん、と弾かれて、恨めしげにロビンを見遣る。くすくす笑う彼女は先程まで持っていたワイングラスを早々に紅茶のカップに持ち替えて、優雅にそれを傾けた。引き際を弁えた、大人の夜。ただ呑まれてしまえ、と酒瓶を派手に散らかした私とは大違い。


「……気になる?」
「……まあ、ね」


本当は気になるどころの騒ぎじゃなくて、こないだから頭の中がずーっともやもやしっぱなしなんだけど。分かってて聞いてくるロビンも大概タチが悪いし、私の前で遠慮せず他の女の話をするルフィたちはもっと悪いし、何も無いことは百も承知なのにそれでも嫉妬してしまう私は、もっともっと悪い。


ー凄く、綺麗だった。


サンジ君が作ってくれたカクテルじゃちっとも酔えなくて、持ち出した酒瓶をダイレクトにそのまま喉に流し込む。
あの艶やかな黒髪も、ダイナマイトなボディも、ルフィに向けた恋する瞳も。
なにもかも完璧。二年も一緒にいたら、女の私でも惚れてしまいそう。
……二年、か。


「大事なのは、時間じゃないと思うわ」


ロビンがいつの間にか、その美しく器用な指先で、なにやら編んでいる。


「…彼がずっと想っていたのは、たった一人だと思うわよ?」


さあ出来た、と微笑んだ彼女が、やわらかな声でルフィを呼ぶ。綺麗な花冠を手渡して、そっと耳打ちすると、ルフィの顔がぱっとほころんだ。


「ありがとなロビン!ほら、ナミ!」


ふわ、と私に被せられたそれは、夜に映える鮮やかな黄色。


「今、ロビンが教えてくれたんだ!おれの二年間の気持ちにぴったりだな!」


ロビンと同じようにこっそり耳打ちしてきた言葉と、少し照れくさそうなその笑みは、


私のもやもやなんてあっさり吹き飛ばす、


まるで太陽のような、





向日葵
(私はあなただけ見つめる)





END
 

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