Book2

□C散歩
2ページ/3ページ

突然のことに狼狽えたのは、思わず太い首に腕を回す格好になったナミだけではなく、遠巻きに見ていたドフラミンゴの部下たちもだった。


「わ、若様!まさか!」
「困ります、また供も連れずに…!」
「ドレスローザまではそう遠くねェな?おれは一足先に、コイツと王宮へ戻る」


そう言って制止を振り切り、軽やかに空へ身を踊らせた男に、ナミは目を見張ることしか出来なかった。






「どういう理屈で飛んでる訳……?」
「あ?そんなにおれのことが気になるか?」


にやにや笑いを浮かべる男の頭に一発お見舞いしてやろうかと思っても、ここは海の上。落とされたら困るので、ぎゅうと首にしがみついたまま。それすら男の思惑通りで、ますます妖しい笑みは深くなる。


「…まさか、”トリトリの実”モデルフラミンゴ…?」
「おれは”イトイトの実”の能力者だ。糸を雲に引っ掛けて移動してんのさ」
「……なんか、それっぽい説明だけど、納得いかないわ」


天候の科学に精通した身からすればよく分からない原理だけれど、世の中には説明のつかないことがたくさんあるし。ナミは割とあっさり解明を諦め、凄いスピードで空を駆けていく男に抱えられたまま、眼下に広がる海を見た。


「空を飛ぶなんて、夢みたい……子供の頃から憧れていたけど、本当に叶うなんて」
「気に入ったか?」
「そうね、あなたに抱きかかえられていることを除けば」
「フッフッフッ!余程海に叩き落とされてェらしい」
「ごめんなさい」


立場も体格も全く異なる二人の軽快な会話のやり取りを聞いていたのは、海鳥だけである。






「にーーん!若が女の子を抱えて飛んで来ただすやん‼︎」
「ああ、報告にあったコね……待って、飛んで来たの?」


ひらりと王宮に舞い降りた主の元へ、慌てて駆け寄る二人の部下。


「おかえりなさいだすやん!」
「おかえりなさい若様、先に戻られたんですね?部屋は整えてあります」
「ご苦労。ナミ、コイツらはウチのファミリーの幹部、バッファローとベビー5だ。残りはおいおい紹介する」
「あ、えーと…お世話になります」


客人を興味深げに眺めていた若い幹部たちは、ナミにつられてぺこりと律儀に頭を下げた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ