Book2

□昼日中ドリーマー
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くるりと身体を半回転させられて、獣のような体勢で男を受け入れている。
犯されている、というのが酷く現実味を帯びる体位でありながら、その反面男の顔を見なくても良いことにほんの少しだけ気が紛れる。なにしろ向き合っている時は顔を背けたり目を瞑ることを許されず、そのサングラスにナミの苦悶の表情が常に映ることが、ドフラミンゴの無上の悦びであるようだったから。




ーあと何度果てれば、この悲劇に幕が引かれるのか。


快楽と虚無感がないまぜになった頭で、浮かんでは消える白昼夢のように不確かな願望。
自分の死か、この男の死か。
……迎えが、来るか。


「ルフィッ…、ゾロ、……サンジく、」


大切なおまじないのように心の中で唱えていた筈の仲間の名前が、音になって漏れ出ていたことに気付いたのは、背後から貫く欲望のリズムが不意に止まった為だった。


「初めてだな」


薄い唇から零れた低い声が、ぞわりと背筋を這い上って、鼓膜を脅かす。


「……おれに抱かれながら、他の男の名前を呼んだ女は」


また半回転させられた身体から男のものが抜けて、こぽりと音を立てて精液やら蜜やらが溢れ出す。その喩えようもなく卑猥な感覚に身を震わせながら、ナミは恐る恐るドフラミンゴの顔を見た。


「あ、あァっ!」
「……本当に、お前は、どうして」


一瞬だけ見えた男の表情を訝しむ暇も無く、また腹の奥に撃ち込まれた衝撃に翻弄されて、ナミは呻く。後はいつも通り、終わるまで耐えて、気を失うように眠って、目覚めたらまた男に抱かれるのだろう。ただいつもと違うのは、ナミが達する瞬間を見逃すまいと常に余裕の表情で見下ろしているドフラミンゴが、ナミの首元に顔を埋めたまま、無言で腰を進めていたことだけだった。




涙などとうに枯れた。
だから、首筋を伝う雫は


きっと、ただの、汗だ。





昼日中ドリーマー
(全部夢だったらいい。攫われたのも、犯されたのも、男が哀しそうに見えたのも、全部)





END
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