Book2

□昼日中ドリーマー
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何度陽が沈んで、月が昇ったのかなんて知らない。
たとえ夜中だろうが真っ昼間だろうが、あの男のいる時はただ組み敷かれ欲を受け入れ、いない時は非情な現実を忘れてしまいたくて、逃げるように眠るだけなのだから。




「フッフッフッ!本当に可愛い女だよ、お前は」


今が昼間だということは、窓から入る眩し過ぎる程の日の光でぼんやりと認識した。少し前に吐き出した欲を拭き取ることもせず、ぐちゅぐちゅと泡立つ音を愉しむかのように緩急つけて腰を打ち付ける男の肌に浮かんだ汗が、丁度ナミの顔に落ちて来て、目の下を伝う。
まるで涙みたいに。


「…いや、あ、……ぁ、」
「こんなに濡らしておいてか?」


心底愉しそうに唇を歪めたドフラミンゴが、結合部から掬い取った液体を見せ付ける。長い指からとろ、と垂れたそれは胸の一番尖ったところにかかって、そんな刺激ですら今は地獄のように辛く、甘い。半分は男の出したものなのだし、もう半分だって強制的に目覚めさせられた泉で、そこに自分の望んだことなんてひとつも無いと言いたいのだけれど、もう喉は枯れて痛むから、喘ぎ声と拒絶の言葉を交互に繰り返すしか無かった。


「あ、ぃや……ん、うぅ」
「…どこもかしこも甘ェなァ、砂糖菓子みたいに」


律動を継続しながら片手で器用にナミを抱え起こしたドフラミンゴは、届く範囲全部に愛おしむように唇を押し付けて、なんでだろうなァ、と呟く。
額、まぶた、鼻、唇。両耳、首筋、鎖骨、胸。肩から二の腕、両の手の指一本一本に至るまで。
最初の頃はいちいち振り払って拒絶の意を示していたナミも、今では大人しくされるがままだった。
ちゅ、ちゅ、とリップ音が響く短いようで長いこの時間だけは、目を瞑れば性的な意味合いは薄れ、まるで家族がする親愛の情を込めたやわらかなキスのように思い込むことが出来たから。




「ひっ、あ、」


左耳にぴちゃり、とやけに大きな水音が響いた。同時にあたたかい舌が耳の中を蠢く感触に一気に現実に引き戻されたナミは、短い悲鳴とともに瞳を見開く。


「目を閉じるな」


ドフラミンゴの口元が、これでもかと吊り上がる。嗤っているようでもあるし、額にうっすら浮かんだ青筋は、怒りを孕んでいるようにも見える。こんな時でもサングラスは外されないので、本当は何を考えているのか、全く読み取れないままだ。


「お前を抱いていいのは、おれだけだ」
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