Book2

□ブーゲンビリア
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「緑だ」
「いーや、青に決まってる」


暑い暑い夏島の、熱い熱い陽射しの元。
静かに、されど滾る程に熱く、男たちの睨み合いが始まった。




海賊と名乗るには純粋過ぎる船長が、無邪気な冒険の果てに人助けをするのはいつものことで。偶然助けた島一番の資産家にいたく感謝され、その豪邸の大きなプール付きの庭園で宴が催されていた。


灼けるような夏の太陽。
晴れ渡る空、白い雲。
目の前の豪華な青いプールの奥には、更に青い海が広がっている。
これでもかと並べられた料理も、酒も、全て一流。何の文句もつけようが無い。
あとは、隣に見目麗しい女がいれば、完璧。
そんじょそこらの女では到底敵わないような、この世のあらゆる美を集めたような美人航海士が、水着で隣にいれば。




「この前の島でおれがナミの買い物に付き合ってやったんだよ。そん時に、緑の水着を買ったんだから間違いねェ」


もう一つはどんな色だったか。
わざわざ二つ持って来て、「ゾロはどっちが好き?」なんて可愛いことを言われた。自分の髪の毛よりは大分鮮やかだったけれど、明るいエメラルドグリーンの水着を持って胸元に当ててみせたその姿は、まるであなたの色に染まりたい、そんな乙女心の表れのようで。


「……随分都合のいい解釈じゃねェか、クソマリモ」
「あァ?」
「おれと買い物に行った時ナミさんは、速攻でコバルトブルーの水着を持ってきたんだぜ?サンジ君みたいな色、って」


あんまり嬉しいことを言うものだから、ついプレゼントしちまった。
にやにやと口元を緩ませたサンジに、ゾロは呆れて溜め息を吐く。


「たかられてるだけじゃねェか」
「うるせェ!あれは絶対、おれの隣で着る用に買ったんだ!お前には試着室で着てみせてくれなかったんだろ、ざまぁみろ」
「……プレゼントしたからサービスだろ。二つ持って来て『どっちがいい?』って訊く方が、よっぽど恋人同士っぽいじゃねェか。お前はただの財布だ」
「……水着姿を拝ませてもらえなかったからって、スネんなって」


ぐぬぬ、とお互いに羨ましい点を歯噛みして悔しがり。
ナミのこととなるといつも喧嘩になる二人をよく知るクルーたちは、はなから距離を置いてそれぞれ食事や泳ぎを楽しんでいる。


穏やかな喧騒の中、カツン、と響いたヒールの音が、周りの空気を一変させた。
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