Book2

□桜
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艶やかでいて、儚げな花の、美しい表紙に心惹かれて。
私は立ち寄った書店の用も無いコーナーで足を止めた。
写真集にしては小さく、装丁も可愛らしいその本は、綺麗にラッピングされて、もともと買う予定だった書物たちとともに紙袋に入れられた。プレゼントなんて普段は貰う専門だけど、たまには、ね。
彼は、この花が好きだから。




「綺麗だなー…」


膝に乗ったチョッパーが、頁をめくっては何度も同じ台詞を言う。
突然の贈り物に目を輝かせた彼は、一瞬警戒した後、こちらに他意が無いことを知ると、今度こそ大袈裟に喜んだ。いくら普段からお金に煩い私でも、仲間にささやかな贈り物くらいするのよ。何倍返し、とか言ってないから今回は。


「へェ、お前がプレゼントなんて珍しいな」
「…!チョッパーは可愛いから、特別よ」
「可愛い⁉︎可愛いなんて言われたって嬉しくねェぞコノヤロー!」


本を覗き込んで、隣に座ったゾロが、チョッパーのふわふわの毛並みを撫でる。


「桜、好きだもんな」
「うん、ドクターの花だからな。でも、最近は桜を見ると、ロビンのことが浮かぶんだ」
「ロビンが?」
「上手く言えねェけど……なんか優しくて、綺麗で、でも力強くて。それに、ロビンが能力使う時って、花びらが舞うだろ?」




チョッパーが次の頁をめくろうと蹄を伸ばした時、俄かにアクアリウムが騒がしくなる。慌ただしく扉が開いて、腕から血をだらだらと流したルフィが入ってきた。どうやら釣ったサメに噛まれたらしい。ぎゃー!い、医者ー!おめェだよ‼︎というお決まりのやりとりをして、医務室にルフィを引っ張っていくチョッパーが、こちらを振り返ってにっと笑った。


「ナミ、ありがとな!それ治療終わったらまた観るから、ナミとゾロで先に読んでて!」
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