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□恋敵ホロウ
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ーー面白くない。
むうっと頬を膨らませて、私は見張り台の下に広がる光景を見ていた。




「ナ〜ミすわ〜ん!見張りお疲れ様〜!紅茶とクッキーをお持ちしましたー!」
「ありがとサンジ君、そこ置いといて」


見張り台に上がってはいるものの、全然集中できない。そもそも敵が来るかもしれない方向なんて見ていない。サンジ君は不思議そうに私が見つめていた方向に首を向けると、フッと笑って胸から煙草を取り出した。


「アイツら、またジャレてますね?」
「……そうね」
「二年も一緒にいたんだもんなァ……クソ羨まけしからん」
「……」
「まァ、ヤキモチ妬くナミさんも可愛いけど」
「っ、妬いてなんか」


煙草の煙を器用にハート形に吹き出すと、マリモに飽きたらいつでもおれがお相手するからね、と語尾にも過剰なハートをつけて、サンジ君はキッチンに戻って行ってしまった。


「……もー、なによ」


腕を組んでもう一度見下ろすと、そこにはいつものように甲板に座り込んで昼寝をしようとしている剣士の姿。そしてもこもこのトナカイを強引に抱き締めながら、構ってとばかりにゾロに纏わりついているのは。


「面倒くさそうにして、結局相手しちゃってるじゃない……」




なんの因果か知らないが、一味がバラバラになった時、ゾロは王下七武海、”鷹の目”ジュラキュール・ミホークと、スリラーバークからくまに飛ばされたペローナがいる島にいたらしい。
私は空島でおじいちゃんたちの元、必死に天候の科学を学んでいたというのに、この男は若い女の子と二年も寝食共にしたというのか。サンジ君でなくても、これはけしからん事案。
ピンクの髪にゴシックロリータを着こなしたかつての敵を見て、私は溜息を吐いた。




さてこのゴーストプリンセス。
一味がいよいよ再結集するというその時に、ちゃっかりゾロについてきて、「モリア様が死んだなんて到底信じられねェ。探しに行くから途中まで乗っけろ」とのたまった。


「にしし!面白そうだ、いいぞ!」


……ええ、分かってる。私たちの船長はこういう人よ……




そんなこんなで、麦わらの一味とペローナの珍道中が始まったのだ。
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