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□ティー・スプーンに致死量の毒
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「ナミさん、紅茶をお持ちしました」


選び抜いた上質の茶葉。
彼女のお気に入りの茶器。
こんな寒い夜には、ビスケットとティー・スプーンに一杯のオレンジ・ジャムを添えて。


「ありがと、サンジ君」


君に喜んで貰いたいから。


「ジャムはビスケットにつけてもいいし、ロシアンティーにするのもいい。体が温まるよ」






柔らかそうな唇から伸びた舌が、ぺろり、とジャムをひと舐めした。


「美味しい」
「良かった」




二人きりのダイニング。
誰にも邪魔をされずに、君の微笑みを見つめていられる。


「とっても、甘いのね」




その甘さは癖になる。
舐め終われば、また求めずにいられない。




ああ、おれの心は、ほんの少しだけ与えられたその甘みを、もう一度味わいたくて浅ましく彷徨うのに。声に出すことは叶わないから、待てが出来ない犬みたいに、必死で君の気を惹こうとするのに。
小さなシルバーに乗った精一杯の愛は、何の躊躇いも無く君の舌の上で溶けてゆく。




たったティー・スプーン一杯の、


それは、


甘い、甘い、毒。




ティー・スプーンに致死量の毒
(求める程に、もがき渇く)





END
 

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