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□隠し味に恋をひと匙
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「…おい、ニコ屋」
「なにかしら?ロー」
サニー号のダイニングに揃ったいつもの仲間と、最近居候をしている同盟船の船長さん。滅多に話しかけてはこない彼が、たまたま隣に座った私の名前を呼んだから、フォークを持つ手を止めて首を傾げた。
「サンジのメシはほんとうめェな!」
「おいルフィ‼︎またおれの皿から取ったろ‼︎‼︎」
「ヨホホホホ!ほっぺたが落ちそうですー!あ、私、ほっぺた無いんですけどー‼︎」
陽気な夜の、賑やかな食卓。色とりどりの美味しい料理。笑い声と、時々怒声。
「…いつもああなのか?」
「そうよ?あなた、海賊の食事にマナーを求めるタイプなのかしら」
「いや…そっちじゃない。アレのことだ」
「…ああ、アレね」
思わずふふ、と微笑みが漏れる。
彼が眉を顰めて見つめていたのは、うちの航海士さん。そして、あれやこれやとお姫様の世話を焼く、サービス過剰なコックさん。
「少なくとも私がこの船に乗った時には、そうだったわよ?」
隣でチッと舌を打つ音。
あらあら、面白くなさそうな顔ね。
でも、他の皆はまだ気付いていないようだから…黙っていておいて頂戴?
あなたはどこまで気付いたかしら。
ナミの海鮮パスタだけ、明らかに具材が豪華なこと?
ナミのデザートにだけ、余計にフルーツが乗っていること?
紅茶をサーブする時に、さりげなく隣のゾロとの間に割って入っていること?
ルフィとウソップのお肉の取り合いに皆が盛り上がっている隙に、彼がそっとナミの髪を撫でたこと?
ナミが、少しだけ耳を赤くして、はにかむ様子を見せたこと?
それともーー
交わる視線に、お互い仲間以上の感情が隠れていること、かしら?
隠し味に恋をひと匙
(ヤキモチもスパイス、かしらね)
END