昨日のデルニエトラン Yesterday’s dernier train.

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「そっか...じゃあ、しばらく自殺の方は調べられないか...」

その言葉に僕はぎょっとする。

「つか、ひなちゃん調べるつもりだったのか?!」

「うん、翔平に火が付いちゃってたし。」

「はあ...」

これだから無駄な労力使うんだよ。ああいうタイプの人間と関わるっていうのはさあ...
そんな僕の心情を読んだ緋菜は、呆れた様子で言った。

「紺って本当に翔平のこと嫌いよね。」

「そういうことを気にせず思いっきりいうひなちゃんは、クラスの女子からいじめられて高校生活を過ごしたのでしたーめでたしめでたし。」

「紺にだけだよ。」

「それは僕にいじめられたいっていうメッセージ?何?ひなちゃんマゾだったの?いやぁ、小2の頃からずっと一緒だけど、そんな性癖知らなかったなぁ。」

「紺...すごくウザイ。」

「それだけが僕のアイデンティティ、ってね。」

普通の人なら切れているところだが、毎日付き合ってくれている緋菜は僕の軽口を流す。高速で流す。
そして僕はダメージを受ける。

「アイデンティティはどうでもいいけど。午後の授業には出ないと駄目だよ?」

「はいはい、気が向いたら、ね。」

「絶対に出ないだろ。」

「出ないよ。」

ゴスッ!!

「お金がもったいないので出てください。じゃなきゃ、学校辞めちゃえば?」

「キ、キツいよね、ひなちゃんって。言葉もストレートも。」

ズキズキと痛む右頬を抑えながら、僕は思う。
味方でよかった...と。
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