昨日のデルニエトラン Yesterday’s dernier train.

□プロロ―グ
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カチッ、カチッ、カチッ、カチッ‥‥。

どこからともなく、時計の針の音が聞こえる。

カチッ、カチッ、カチッ、カチッ‥‥。

あと数分もすれば、きっと大騒ぎになるだろう。

カチッ、カチッ、カチッ、カチッ‥‥。

どうしようもないくらい、涙が出てくる。

カチッ、カチッ、カチッ、カチッ‥‥。

自分が『犯した』罪への、責任は取らなければならない。

カチッ、カチッ、カチッ、カチッ‥‥。

それが、けじめ。

カチッ、カチッ、カチッ、カチッ‥‥。

ここに残すものは何もない。全て、捨てた、

カチッ、カチッ、カチッ、カチッ‥‥。

いや、一つだけ残っているけれど‥

カチッ、カチッ、カチッ、カチッ‥‥。

だれも、気づくまい。

ゴ―ン、ゴォ―ン、ゴ―ン、ゴォ―ン。

5回、鐘の音が鳴り響く時。

ゴォォ――ン‥‥。

少女は、自分の机から一歩。足を踏み出した。
そして、また。

カチッ、カチッ、カチッ、カチッ‥‥。

時は、止まることを知らない。

これは日常へと戻っていく最終電車《デルニエトラン》に乗りそこねてしまった人たちの、"日常"のお話。
 
 

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