毒舌芸人が恋人です。
□×マツコ様
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「有吉さんの番組は欠かさず見られたりしてるの?」
「全部は見れてないですね。ヒロのテレビ全部見てたら、一日終わっちゃうので。」
「そうよね。毎週15本とかあるんだものね。」
マツコさんを大きく頷いた。
「でも、マツコさんとの番組は本当大好きなので、毎週見てます。」
「あなたもなかなかテレ朝っ子なのね。あの人の影響でしょ。」
「そう…なんですかね。なんかヒロがVTRひたすら見続けるとかそんなに面白いと思えないんですよね。」
私が話すにつれて、マツコさんがにやにやと笑いだした。
「わかるうう!もったいないわよね。なんであんな風にするのかしらね。」
マツコさんはそう言って距離をつめた。
「やっぱり数字ですよ。今、とにかく、なにしてても、取れますからね。断られないし、ものすごい高くもないし。」
「いや、ちゃんと仕事も見てるのに。」
「あはは。…そうですね。」
ヒロの人気は最近群を抜いている分、彼氏だろうと、ビジネス的に見ることがあるのは事実。
ただ、それさえ楽しくもある。
「他にないの?有吉弘行彼女の憂鬱。」
マツコさんのテンションがどんどん上がっていくのがわかる。
テレビで見ていてもわかるが、マツコさんはヒロのこと本当によく見ていると思う。
「え、あれは?風俗通いは?」
マツコさんが畳み掛けるように聞いた。
「ああ…まあそれはいいんです。」
「いいの?」
マツコさんは深刻そうに聞いた。
「いいっていうか、本当はほとんど言ってないと思いますよ。」
私は苦笑いで言った。
「やっぱりそうなの?まあ、あなたみたいな彼女が居たら普通よね。嫉妬したりしないの?」
「それはー……あんまりないですけど…」
「あるのね。」
マツコさんがにやっと笑い、きっぱり言った。
「まあ、綺麗な人が多い世界ですから、小さいのはよくありますよ。」
「まあね。でも、私から言わせれば、あなたも普通に綺麗な方よ。」
「でも、テレビに出てる人は全然違いますし、その綺麗であることが仕事ですしね。」
「まあ、そうね。え、結構でれでれするの?」
そう聞くマツコさんの表情はとても楽しそうだった。
「それは、あんまりないですけど、…たまにはね。」
私も少し笑いながら答えた。
「いやー!見たい!録ってきて録ってきて!」
マツコさんが手をバンバン叩いて、声を張った。
「そんなことしたら、しばかれます。」
「やっぱり、彼女に対してそういう態度を取るのね。」
「でも本気じゃないですから。」
私は首を振って答えた。
すると、そのとき、私の携帯が震えた。
「いいわよ。出て。」
マツコさんが気を使って、私の携帯を指差した。
「申し訳ありません、失礼します。」
私は頭を下げて、携帯を見た。
「あ、ヒロだ。」
それは、只今、話題の渦中のひとだった。
「ええええ!出なさい出なさい!」
マツコさんは目を見開いた。
私はもう一度失礼しますと言って、電話を取った。
「もしもし。」
「おお。マツコさん会えた?」
「うん!今、楽屋にいるの!」
「えっあんまり居座んなよ。」
「なんでなんで!めっちゃ楽しいのに。」
「べらべらしゃべんなよ?おまえ、まだ仕事あるの?」
「今日は、このまま直帰だよ?ヒロ、今日早いの?」
「ああ、もう終わりそう。外飯行こうよ。」
「いいね、久しぶりに。どこ行く?何食べたい?」
「とりあえず、もう終わったから迎えに行くわ。どこ?」
「えっと…」
私はスタジオの場所を伝えて、電話を切った。
「有吉さん来るの?」
マツコさんが電話を締まった私に間髪入れず聞いてきた。
「はい。なんか、今日はもう仕事終わったらしいので、これから久しぶりに外でご飯食べようかって…」
「え!ねえ、それってさ!」
「そうだ!マツコさんも一緒にどうですか?」
「いいのお!?でも一応有吉さんに聞かなくていいの!?」
「押し切ればいいんじゃないですか?」
「さすがね。彼女は、あの有吉弘行を押しでどうにかできるのね。」
マツコさんはおもしろがったように言った。
「いやいや、そんなんじゃないです。」
私はマツコさんの真剣な様子に笑いながら首を振った。
私とマツコさんが地下の駐車場で待っていると、ほどなくして、ヒロの車が入ってきた。
車は私たちの前に止まり、ヒロが窓を開けた。
「なんで、マツコさんいるんすか。」
ヒロがマツコ様を笑って見た。
「ああ、ヤダ。私、今邪魔者だわ。」
マツコ様が顔を隠して、少し後ずさった。
「そんなことないです!!ねえ、ヒロ、今日は3人で飲もうよ。」
私は窓からヒロを覗き込んだ。
「おまえが頼んだんだろ。」
ヒロが呆れたような顔をした。
「…まあ。」
「わかったよ。マツコさんも乗ってください。」
ヒロは姿勢を低くして、窓からマツコさんを見て言った。
「ありがとう!」
「マツコさん、後ろどうぞ。」
私は後部座席のドアを開けて、マツコさんを招きいれた。
それから、私は助手席に乗り込んだ。
「もう、すごい楽しかったわよ。るいさんとお話しさせていただいて。」
「えー本当ですか?すごいうれしい!」
マツコ様の言葉に私は両頬を押さえて、喜んだ。
「ただのミーハーですから。」
「それでいいのよ。それより、有吉さん、あなた同棲してるの?」
マツコ様の言葉に、ヒロが私を一瞥した。
「はい。一応。」
「寂しい寂しい詐欺だったのね。」
「いや、寂しいは寂しいんですよ。」
ヒロが不機嫌そうにそう答えた。
「あんた彼女の前でそういうこと言う?」
「いや、いいんですよ。忙しいのはね。別に不満じゃないんで。」
「っていつも言ってます。」
「寂しさが板についちゃってるのね。」
マツコさんが頷く。
「え、で、どこ行く?」
ヒロが大通りに出たところで言った。
「このまえ教えてもらった、居酒屋さん行きたい。このへんだから。」
「え、新しいとこ?」
ヒロがいやそうな顔をした。
「でもね、あの今田さんおすすめだよ。」
「えー…じゃあ、ちょっと電話してみてよ。」
「え、あなた、今田さんと知り合いなの?」
「お仕事で一緒になることがあるので。」
「なんで一緒になるのよ。」
「仕事っていうか、接待ですね…」
「こいつ、意外に業界に顔利くんで気を付けたほうがいいですよ。」
「あら。」
ヒロがそんなことを言うもんだから、マツコさんは口元を押さえた。
それから私たちはそのお店で4時間以上飲み続けることになる。
ヒロもあまり普段、マツコさんとこうして飲むこともないらしく、楽しんでいた。
その話はまた今度。
おわり