それでも毒舌芸人が恋人です。

□私の家
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「たっだいまぁー」

見慣れたドアを勢いよく開ける。

千鳥足になりながら、廊下を歩き、リビングのドアもその勢いのまま開いた。

「おかえりー。」

私とは随分テンションの違うヒロの声が買ってきた。

ヒロはソファに座りながらビール片手にテレビを見ていた。

「あー!ヒロ、今日は早いねー。」

「もう、日付け変わってるけどなー。」

ヒロが私を見ていった。

「でも、なんか帰ってきてヒロがいるって嬉しくて。」

「ここんとこ会社に泊まってるのに?」

私はヒロの隣に腰を下ろす。

「それは、本当に大事なプロジェクトがあってー」

「結構飲んできたの?」

「まあ、その大事なプロジェクトが終わったから、打ち上げ。」

「ああ、そう。」

ヒロは少しだけ怪訝な顔をした。

「本当はすぐにでもヒロに会いたかったよ?」

私はヒロの顔を横から覗き込んだ。

ヒロはそんな私の顔を見つめて、黙っている。

「ほったらかして、ごめんね。」

こんなに好きでも、たまにヒロに伝わってないことがあって。

私はヒロの手を握った。

「俺が寂しかったみたいに言うなよ」

「え、寂しくなかったの?私だけか…」

私はあからさまにため息をついた。

「おまえって…」

ヒロも立て続けに息を漏らした。

「なに?」

少し不安気にヒロを見た。

「酔っ払うとさらにたち悪いな。」

「えー」

ヒロの言葉に私は若干、ショックを受けていた。

「いや、別に悪い意味じゃなくて」

「絶対悪いじゃん。」

「いや、だから、おまえのことかわいいって思う奴はたくさんいるだろうな。」

「どういう意味、急に。」

「いや、」

さっきからヒロはいや…しか言ってない。

「つまり…」

ヒロが言葉を濁した。


「つまり?」


「あれだよ、俺もそりゃ寂しかったに決まってるってことだよ。」


「だよねー?」


私は、私ヒロの腕にしがみついた。


「本当たち悪い。」


ヒロが視線を逸らしてまた呟いた。


「お風呂はいってくるねー。」


私は勢いよく立ち上がって、お風呂場に向かった。


「おい、溺れんのよ?」


「じゃあ、ヒロ、一緒に入ってくれるー?」


私は振り返った。


「………」


ヒロが黙って、仏頂面で私を見ている。


いつも平気でセクハラしてくるヒロも、私が言うとこんな風になっちゃうんだ。


「ふふふ。」


私は、意地悪くヒロを見て、洗面所に入った。


こういうテンションの日も、いつでもヒロと笑ってたいです。





おわり

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