毒舌芸人が恋人です。

□噂される男子と女子
1ページ/2ページ





「この前は本当に楽しかったよね。」



るいを淳さんたちに紹介してから2週間後、ロンハースペシャルの収録終わり、珍しく大人数での飲み会に参加した。




「有吉の彼女、俺も会いたかったわあ!」




そこにいなかった面々は陣内さんを始め、口々にそう言っていた。



「有吉さんの彼女ってどんな人なんですか?」



狩野もまたニヤニヤしながら、聞いてきた。



「一般人なんですか?」



るいを紹介してよかったと思ったが、若手にまわるとろくなことにはならない…



だから、あのときの面々にとどめておきたかったのに、そうはいかなかったらしい。




「一応業界人やろ。」



そしてあのときいた面々は得意げに話始める。



ジュニアさんもそうだ。




「えっ、タレントですか!?」



後藤が言った。



今日の打ち上げは芸人に加えて女性出演者も来ているため2テーブルに分かれてるにも関わらず、全員が俺の彼女の話に食いついている。



「違うよ。」


俺は首を振る。



「アナウンサー?」



陣内さんが声を潜めて言った。



「陣内さんじゃないんですから」



どの口が言うのかと思い、笑ってしまった。




「え、俺も絶対アナウンサーやと思った!」



藤本さんが言った。




「な!俺、竹内さんかと思って、ドキドキしたんやけど。」



陣内さんが奥にいた竹内に向かって言った。



竹内は首を振っている。



「あれ、そういえば、竹内には言ったの?」


淳さんが俺を見て小声で言った。



「あ、るいが言ったみたいです。」



俺は頷いた。



「聞いたの?」



淳さんは声を大きくして、竹内に聞いた。



「…はい。」



竹内は目を見開いて答えた。



るいを淳さんたちに紹介した数日後、るいが竹内に話をしたらしい。



「有吉の彼女、竹内さんの大学の先輩なんだって。」



亮さんがみんなに言った。



「ええ!竹内さんの知り合いだから紹介されたんすか?」



村上が聞いてきた。




「全然関係ないんですよ。なので本当にびっくりして、今まで普通に大学の先輩後輩たちでご飯とか行っていて、有吉さんの話もしていたので、本っ当にびっくりしました。」



竹内が首を振る。



「どうなの?竹内さんからして、その先輩と有吉が付き合ってるのは。」



「るいさんは、大学のときからすごい人気があって、いつも良い彼氏がいて長く付き合ってることが多かったんですよ。私もいつも紹介してもらってたんですけど、最近は紹介もしてくれませんでしたし、彼氏の話もほとんどしなくなってたので、どうしたのかなとは思ってたんですよ。」



「まさかそれが有吉とは思わないよね」



淳さんが相槌を打った。



「思わなかったです!でもさすがるいさんとは思いました。」



竹内が俺を見た。



「やっぱり、有吉さん、今とても女性の人気が高いじゃないですか。イメージなんですけど、女性にも厳しいところがあるのかなとか、いろんな方から声をかけられてるんだろうなと思ってたので、それで、あの大学時代からアイドルだったるいさんを選ばれるっていうのが、私としてはさすが有吉さんだなと思いました。」



「竹内さんからしたら、今女性に人気だけど女性に厳しい有吉が、男性に人気のるい
ちゃんを選んだっていうのが、すごいビッグカップルなんや。」



ジュニアさんが納得したように相槌を打った。




「本当にそうですね。でもたまに聞いてた彼の話、とっても優しいなと思うことが多かったので、やっぱり有吉さん彼女にお優しいんですね。」




竹内が満面の笑みで俺を見た。




「いや…」



嬉しそうにみんなの前で言われて、俺は目を逸らさざるをえなかった。




周りは大盛り上がり、俺だけが明らかに損をしているとしか思えない。




「え、スタッフとか?」



そう言ったのはmisono



「もういいだろ。」



女子にネタにされるのはいやな予感しかしない。



「ええ!どこの局?」



益若ものってきた。



「テレビ局のスタッフじゃないから」



黙っていても、話題は進んでいく。



「代理店で働いてるんでしょ?ちょっとくらい教えてあげてもいいでしょ。」



淳さんが言った。



「いやですよ。絶対、雑誌にしゃべるんですから。」



「しゃべらないよ!」



俺の言葉に対して、女子たちがぎゃーぎゃーと言い出した。



「有吉、俺にも紹介しろや!」



藤本さんが叫んだ。



「俺も会いたいですわー!おまえらも会いたいやろ。」



後藤くんが若手に向かって言った。



「…そうっすねえ。」


それぞれがテンション高く頷く中、綾部だけは歯切れが悪かった。



「こいつは会ったことあるんすよ。」



俺はそれを目がけて、指を指した。



「えっ!なんで?」



「いや、やめてくださいよお…」



綾部は眉を垂れ下げて観念した顔をしている。



「なになになになになにがあったの!?」



何かを感づいた淳さんが興奮して言った。



「こいつ俺の彼女口説いたんすよね。」



俺はニヤニヤと綾部を見た。



「ええ!」


みんなは大笑い、綾部はやられたという顔をしている。















あれは、もう1年くらい前の話になると思う。



二人きりでご飯に行って、もう帰ろうかというとき、俺が会計をしている間にるいは外に出ていた。



そのとき偶然綾部が同じ店にいて、しかも同じタイミングで出て来たのだ。



るいは店から出て来た綾部にすぐ気付いたらしい。



「こんばんは…」



一度だけ一緒に仕事したことはあったが、まさか覚えられてると思っていなかったため、気づいた素人のふりをして、挨拶をしたらしい。



「あれ、るいさんですか?」



しかし、綾部はたった一回仕事をしたるいを覚えていたらしく、声をかけてきた。



「はい、ご無沙汰してます。まさか覚えていただいてるとは。」



「覚えてるよ。あれ、コンビで初めてのCMだったし、そのあと一回吉本のライブ来てたでしょ?うわー懐かしいなあ。ここで飯食ってたの?」




「はい。」



るいは俺が出てきたらまずいのでは、早めに会話を切ろうとしていた。



「あれきり仕事一緒にならないよね。最近どんなの作ってるの?」



しかし綾部は話し続けた。



「最近はあんまり芸人さんと仕事させていただいていなくて…」




「そうなんだ、今度仕事の話でもしながら飲まない?」



綾部が仕事の話というのを強調して話したらしい。



「ぜひ、機会があれば。」


るいからすれば、年上でしかも仕事相手なので断ることもできず。



俺は会計を済ませて、店のそとに出ようとすると通路の先に、るいが誰と話してるのが見えた。



それが綾部だと気づくのに時間はかからなかった。



るいと知り合いだったのか思い、綾部をつついてやるかと思い、静かに近づいた。



「ていうか今から二軒目とか。」



「すみません、今一緒に来てる人がいるので。」



ふとそんなセリフが聞こえてきたときには、綾部がるいに詰め寄っていた。




客観的に今、彼女が後輩に口説かれてるところに出くわしているという状況が、珍しくて一瞬笑ってしまった。




「そっか。じゃあ、とりあえず連絡先交換しよう。」



いよいよ口説いているので、俺は声をかけた。



「おお、綾部。」



「え、あ、有吉さん!お疲れ様です!飯ですか?」



綾部はわかりやすく驚いて、俺をみると腰を低くした。


さっきまでるいに上から話していたのに、豹変がおもいしろい。



「ああ、おまえは?ナンパ中?」


自分で言っといて笑いそうになった。



「いや…」


綾部がそう言って一瞬るいを見ると、そのとき、るいもまた笑っていた。



「え、あ、え、あ、ええええええ!」




その数秒ですべてを察したらしい綾部はものすごいしごろもどろになり、目をこれでもかってほど目を見開いた。



「おまえ、今連絡先聞いてたな。」



俺はわざと笑いながら、綾部を見た。



「いや、すみません、ごめんなさい!」


綾部はいきなり、道路に膝をついた。


「え、綾部さん。」



るいはいきなりのことにびっくりしてる。



「本当にすみませんでした!」



「綾部、いいから。」



あまりに一生懸命謝るから俺も立たそうと肩を持った。



「知らなかったんです!殺さないでください!」



「わかったわかった。もういいよ。」



さっきとは違う笑いがこみ上げる。



「ヒロ、どんだけ怖がられてんの?」



るいはいまだに驚いている。



「この人がキレたら、眼光で殺されるんですよ。」


「一言多いんだよ!許してやるっつてんのに!」



俺は綾部の頭を一発引っぱたいた。



「つーかおまえ、黙ってろよ。」



あのときはまだ本当に数人にしか付き合ってることを言っていなかった。


口にはしなかったが、るいはばれるのを嫌がっていた気がしていたため、俺は強く言った。



「ヒロ、脅迫みたいになってるから。」



「言いません。え、もう全然誰にも言ってないんすよね?」



「芸人でも片手で数えられるくらいしかいないから。」



「はい。」



綾部は立ち上がって、気を付けをしている。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ