毒舌芸人が恋人です。

□仕事場
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ある日の午前中のことだった。



上司に声をかけられた。


「るいさん、俺、ちょっとこれから急に社内会議にでなくちゃいけなくなってさ、テレビ局での会議出れなくなっちゃったんだよ。飛ばすわけにいかないやつだから、代わりに行ってくれない?」



「え、でも今日の会議って、編成に関する重要会議ですよね?」



「お、さすがわかってるね!だからるいさんにお願いするんだよ。頼むね!」



代理店は変人の集まりですが、こういうところまで変人対応では困ると、私は先輩の後ろ姿を見て思った。




「あー私佇んでる場合じゃない。資料読まなきゃ。」




今日、編成に関する会議に上司が立ち会うのは知っていたけど、詳細についてはかいつまんだ程度にしか把握していない。



スポンサー側として、代理店も非常に重要な役回りだと言うのに、この部に来て2年の私が行っていい会議だとは絶対に思えないのだが、任されてしまったものは仕様がない。











結局、同僚のユメを連れて、自社から徒歩圏内の日本テレビへ向かった。



「るい、あんた本当上司に気に入られるのうまいねえ。なに編成会議なんかに呼ばれてるの。」



入社直後からの仲であるユメもさすがに今回のことは驚いていた。



「いや、ユメだって、相変わらず制作で顔利かせてるでしょ?それにこれは正式な編成会議とは別だからね。」



「制作一本の私にはよくわかんないなー」



暢気に口笛なんか吹く彼女もまた変人。




今回彼女を呼んできたのは、彼女はうちの会社が作ってるCMをほとんど全部頭に入れてるから。



ただ、難点は全然テレビのことを知らない。



芸術家のなかの芸術家。


「てかさ、るいー?」



ユメが急ににやにやして私を見てきた。



「何?」



思わず気持ち悪いと言いそうになった。




「彼氏いるんじゃん?局に。」



「あ。確かに。」



会議のことでいっぱいいっぱいで、忘れていた。




ちなみにユメは私の友達で数少ない、ヒロとの仲を知る人。



でも紹介したことはないし、ユメも仕事で何度か見たことある程度だと言っていた。



「会えたら紹介してね。」




「周りに誰もいなければね。」



「いやいや、周りに誰かいたら、仕事仲間として紹介してくれればいいから。」




「うん、じゃあたぶんね。」



ユメにはよく相談にも乗ってもらってるし、紹介するべきだとは思ってる。









いざテレビ局につけば、スタジオやタレントクロークと編成関係の会議をする場所は違うため、ヒロを目にすることはなかった。



ユメがつまんないつまんないと言うのを無視して、会議室に入った。




みんな何度か顔を合わせたことのある人たちだった。




「るいさんとユメさんが来るのは意外だったなー」



「すみません、正式編成のときは、上司が参りますので。」



「全然いいよ。会議はいつも同じ顔ぶれじゃ意味ないからね。」



局の人がそう言って笑った。



そうして始まった会議は3時間を超え、なんとか次回の本会議の準備が終わった形になった。



変わらない番組があるとはいえ、24時間の番組編成を7日分ともなるととにかく時間を取られた。




「みなさんお疲れ様。今日社外から来られた方で収録見て行かれたい方おられますか?」


部長さんがそう言うと、何人か社外からの人や、社内で普段現場に行かない人たちがちらほら立ち上がった。



「私も行きたいなー」



普段だったらこういうのは絶対参加しないユメがそう言ったため私は驚いた。



何と言っても、ユメはテレビに興味がない。




「それなら、私も行こうかな。」




そうして、部長さんに連れ出された私たち。




「好きなタレントさんとかいますか?みなさん見慣れてるとは思いますが。」





「はい!私、有吉さん見たいです!今日収録されてますよね!」



そう言ったのは、なんとユメ。



ユメをみると、してやったりという顔をしている。



おい・・・!



心の中で大声で叫んだ。



それに他の社員さんも同意して、ヒロの収録を見に行くことに。



でも、正直楽しみ。



付き合い始めてから、ヒロの収録を見たことなんて、2回くらいしかない。



1回は生放送、1回は気づかれることなく、一瞬見ただけだった。




収録と生放送は雰囲気が全然違うし、ヒロが仕事してるところを見るなんてちょっとウキウキする。




「るいも楽しみでしょ。」



「うん、ちょっと。」
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