毒舌芸人が恋人です。

□ラジオはやめて
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今日は少し懐かしい顔ぶれで、ヒロが飲んでいるというので、そこに入れてもらった。




ヒロと付き合い始めて、一番最初に会った芸人さんかもしれない。




テレビではあまり見ないのだけど、私は大好き。





そういう意味では、ヒロと初めてあったときの感じにも、ちょっとだけ似ている。




ちょっとだけ…




私は居酒屋の個室に入った。





「こんばんはー」





「おおおおおお!来た!るいちゃん、久しぶり!」





そこにいたのは安田さん。





「わー!安田さん!お久しぶりです!!」




久しぶりすぎたのと、なぜか落ち着くその顔に思わず声をあげてしまった。




「なんで、そんなにハマってんのかわかんねえんだよな。」




ヒロが首を傾げてお酒を啜っている。




「安田さん、おもしろいから大好きです。」



私はそういいながらヒロの隣に座った。



「いや、そんなこと言ってくれるのるいちゃんだけだよ。」




「…確かにあんまりテレビで見ないです…」



私はそう言いながら、ヒロの隣に腰掛けた。



「え、じゃあなんで、俺のこと見てるの?」



「なんかたまにテレビとかで…」



「なんでそれだけでそんなハマってんのかよくわかんねえな。」



ヒロがぼそっといい、また首をかしげた。



「でも出てくるとき大体おもしろいですよね?」



私の言葉に、ヒロはともかく、安田さんまでもが首を傾げた。




「誰かと勘違いしてない?おもしろいとこなんか見たことないけど。」




「ラジオ、聞いてるの?」



安田さんがそう言った。



するとヒロがすごい勢いで首を振った。




「ラジオ?なんのですか?たぶん、聞いてないです。」



私は首を振った。



学生のときはよく聞いていたが、社会人になってからというもの、なにか特別なことでもない限り聞くことはない。



「俺、有吉のラジオでは結構がんばってるんだよ。」



そう言った安田さんは今までにないほど自信満々だった。



「そうなんですか?聞きたい!」



「ラジオはだめ。」



ヒロは両手で顔を覆った。



「あ、日曜日の夜に行ってるやつ?あれ、東京でやってないから、聞いたことないです。」



ヒロがラジオをしているのは、業界でもいろいろ話を聞くけど、実は聞いたことがない。



「うん、聞かなくていいから、全然おもしろくないから。」




ヒロはしきりに、ラジオの話をあしらう。




「そう言われると聞きたくなる。」



「だめ。」



ヒロが私の耳を両手でふさいだ。



「なんで。」



私はヒロの腕を解いて聞いた。



「確かにやめた方がいいかもしれない。」



安田さんまでもがそんな風に言った。



「どうしてですか?」




「冗談が過ぎるからかな。」



安田さんが答えた。



「いいじゃないですか。」



芸人さんが、冗談が過ぎていけないのだろうか。



「本当にラジオはだめだぞ。」



ヒロが念を押した。




「えー。じゃあどんなことやってるか聞かせてよ。」




「今週のニュースとか。」



ヒロが答えた。



「普通じゃん。」



「芸能人の悪口とか。」



安田さんが言った。



「いつもと同じじゃん。」



「まあ、そんなもんだよ。」



「えー、全然普通。なんかこの前仕事で、ヒロが性癖を暴露してるって聞いたんだけど。」



私がそういうとヒロが噴き出した。




「聞かないで…」



「あはは!確かにるいちゃんは聞かない方がいいかもね。」



ヒロの反応に安田さんはお腹を抱えて笑っている。


「ねえねえ、どんな性癖暴露してるの?」



私はニコニコしながら、ヒロに詰め寄った。



「言わない。」



ヒロが口を強く結んで、にやにやした。




「なんでよー」



「他はるいさんに全部見てほしいけど、…ラジオはやめて!」




ヒロが顔を覆ってそう言った。










おわり

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