毒舌芸人が恋人です。

□最近モテてませんか?
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リビングルームのテーブルで、るいが作った夜食を済ませた俺たちは深夜2時、テレビを見ていた。




しかし、さっきから、家の中にいるはずなのに、すごい視線を感じる。




「なに?どうしたの?」




思わず笑ってしまった。



髪を一つにまとめ上げて、るいはこっちをじーっと見ている。




「ヒロって、もしかしてさ…」





るいが口を開く。




なんだか深刻そうな顔に、いやな予感がする。



「…なに?」



俺は息を飲んだ。




「モテ期?」




るいの言葉がリビングに響いた。




眉間に皺を寄せて、小首を傾げてて、かわいいんだけど、なんかよくわかんないことを言っている。




「え?」




「ヒロが前からモテるのは知ってるんだけどさ、最近すごいモテてるよね?」



るいは眉間にしわを寄せている。




「よくわかんない。どういうこと?」




「最近、モデルさんとかから、かっこいい芸人で絶対名前出てくる。」



「ははっ!…んん。まあ…ねえ。」



改めて言われると、なぜか照れてしまう。




「いいですねえ…モテ期…」




るいはなんだかムスッとして視線をテレビに逸らした。




「どうしたの?妬いてるの?」



俺は笑いが止まらないまま聞いた。



「もしかして…そうなのかな。」



失礼なくらいいやそうな顔をして、るいがそう言った。




「そんな顔するなよ。別に浮気しようとか考えてないから。」



「当たり前じゃこら!」



るいはそう言って、手元にあったタオルを俺の方に投げた。




「ごめんごめん。」




「仕事で一緒になる女優さん、モデル、アイドル、誰と話してても、ヒロは評判いいんだよー。しかもみんな結構本気で男性として好きなんだって!」



るいは机に乗り出してそう言った。




「そんなん言ってるだけだから、本当に。」




俺は首を振った。




「なんかヒロの魅力って知る人ぞ知るんだと思ってたのに、ちょっと悲しい。」




「いや、わかってないよ。」



「そうなのかなあ。ヒロ、ミスターギャップ萌えなんだよね。」



「なにそれ。」



急に萌えポイントを言われて、笑ってしまった。



「最近、テレビでもなんかかわいいとこ見せてるでしょ。」




「見せてないよ。」




「なんかちょっとかっこいいとこ見せたりしてる。」




「してないから!」




「実は優しいところ見せてる。」




「見せてない。」




「若い子と仲良くしちゃってさー」




「やっぱ妬いてんじゃん。」




酒の力も相まって、笑いが止まらない俺。




「違う!テレビの中で仲良くしてるのはいいんだけど、みんながヒロのこと好きなのがやなの!…ん?」



「おまえ、それひどいから!」



自分の言葉に首を傾げているるいにさっきのタオルを投げ返した。




「なんか、ちょっとかっこいいみたいにしてるよね?」





「してないって!」




「してる!!だっていつもすごいかっこいいよ?」




「やめてよ。」




「あ、照れてるううううう。」




「それはおまえが俺のこと大好きなだけでしょ。」




そりゃ、そこまで悪ぶれもなく言われれば、こっちが恥ずかしくなる。




「えー。…うん、でもかっこいいんだもん。」




「なんか違う話になってない?」



今、自分がどんな顔してるのか、想像したくもない。




きっと、顔が真っ赤になってるから。




「ヒロのかっこよさは私だけがわかってればいいのに。」




るいは口をへの字にして俺を見ている。




「るいしかわかってくれないよ、結局。」




「あんまりモテないで、ヒロさん。」




「かわいい…努力します。」




テーブル越しじゃなかったら、キスしてたと思う。



おわり

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