毒舌芸人が恋人です。
□噂される男子と女子
2ページ/2ページ
「そんなことあったん?」
俺が話し終えるとジュニアさんがケラケラ笑って綾部を見た。
「はい…」
綾部はあの日のように、しょんぼりしだした。
「おまえ、もう気にすんなよ。別に怒ってねから。」
「有吉もそう言ってるしさ。」
淳さんが綾部に行った。
「いや、もう俺あのとき、死ぬんだなと思ったんですよ。」
「麻布の歩道で土下座してもらったからね。」
「本当に申し訳ないと思ってるのが伝わったんだよな。」
淳さんの言葉に俺は頷いた。
「かわいいんですか?」
坪倉が綾部を見て言った。
「すっごいかわいいんですよ。だから俺も、一回しか仕事したことなかったのに、めっちゃ覚えてて、しかもそのあとルミネ見に来てて、マネージャーと話しいいなって思ってたんですよ。だから会えた瞬間、めっちゃ嬉しくて。」
「ええ!ここに呼ぼうよ!」
それを聞いて、misonoがそう言った。
「絶対呼ばねえよ…」
「でも、綾部と仕事してるってことは、こんなかでも誰か一緒に仕事してる可能性あるってこと?」
亮さんがみんなを見渡して言った。
「綾部以外もちょっかい出しちゃってるんちゃう?」
ジュニアさんもみんなを見渡す。
「今、みんなるいちゃんの名前聞いて、頭ん中でめっちゃ検索してるやろ。」
亮さんが言った。
「るいちゃんから聞かないの?誰と仕事したとか。」
「聞いてますよ。」
「このまえ、誰に連絡先聞かれたとかも聞いてるゆうてたよね。」
ジュニアさんが言った。
「ここにるいちゃん口説いたやついないの!?」
出川さんがあたりを見渡した。
俺は一瞬言葉に詰まった。
「いるな…」
淳さんが感づいた。
「いやでもね、知らないわけだから、そこで攻めたら、美人局みたいになるから…」
俺は言った。
「まあ、でも今日気づいたら、絶対声かけないでほしいですね!」
俺は口調を強くした。
「え、でも誰か気になるなあ」
淳さんが悪い笑顔を浮かべている。
「おまえ、有吉がいいって言ってるんやから許してやりや。」
亮さんが呆れたように笑った。
「まあ、一人言うとしたら、俺と付き合う前ですけど…」
「俺ですね。」
そう言って手を挙げたのは徳井だった。
「ええ!徳井!」
まさかの色男の自首に全員が肝を抜かれた。
「もう5年前とかですけどね。」
「なんか、綾部さんとか徳井さんとかイケメンに声かけられてるから、どんな人なのか気になって仕方ないんですけど。」
益若が言った。
「本当ですわ!ていうか、徳井は振られたん?」
後藤が鼻で笑いながら徳井を見た。
「え、元彼?」
「ちゃうちゃうちゃうちゃう!」
淳さんの言葉を必死に否定する徳井
「丁重に振られましたよ。なんで俺、振られた話しなきゃいけないんですか?」
徳井が顔を覆った。
「徳井さんに落とせない人いるんですね」
そういう狩野は嬉しそうに言った。
「え、それはすでに有吉のことが好きだったとかそういうことで?」
淳さんが俺をみた。
「いや、違うと思いますよ。」
俺が首を振った。
「なんかそのときは、大学時代からずっと付き合ってた彼氏と別れたばっかりなんですって言われたんで、じゃあ付き合うとかじゃなくても元気出すのに飲みに誘って、一回だけ行きました。」
「なんて振られたの?」
「まだ、気持ちが次に行けないですって言われましたけど。」
なぜか俺ではなく、徳井がダメージを受けていく。
「そうだったんだ。徳井はダメて有吉はよかったんだね。」
「なんで、俺、今日こんなに傷つかなきゃいけないんですか。」
徳井が心底悲しそうな顔をしている。
「でもそのあとに、一人別の人と付き合ってると思いますよ。」
俺は首の後ろをぽりぽりと掻いた。
「徳井を振って、すぐ有吉じゃないんだ。」
「違いますね。」
「そうだよね。有吉も彼女いたもんね。あの益若の友達?」
淳さんが言った。
「…まあね。」
歯切れ悪く答える。
「前の彼女のときはもっとオープンやったのに、なんでるいちゃんとのことはこんなに隠してんねん。」
藤本さんがするどいことを言っている。
「ちょっと業界の人なので、顔とかいろいろばれたら、彼女が仕事しずらくなるんすよ。」
「なんか有吉がちゃんと彼女のこと考えてとかショックやわ。」
ジュニアさんが胸に手をあてて言った。
「竹内さんは、るいちゃんの元彼知ってんの?」
陣内さんが竹内を見て言った。
「はい。」
竹内が大きく頷く。
「有吉のすぐ前に付き合ってた彼氏はどんな感じだったの?」
misonoが言った。
「ハーフのすごいかっこいいモデルさんで、とっても優しくて、徳井さんが言われた通り、大学時代から6年くらい付き合われてた方と別れてしまった後で、るいさんもあんまり付き合う気がなくなちゃってたのに、その彼がすごく親身に少しずつ近づいていて、付き合い始めたんですよ。」
「おまえ…よく話すな…」
るいから付き合う前とかに聞いてた話が出てきて、本当によく知ってる。
「まずかったですかね。」
「一応話していいか、るいに聞いたほうがいいんじゃない?今日は、こういう話、竹内がしてたって俺が言っとくけど。」
「でも、有吉も知ってる話なんだ。」
「まあ、知ってますよ。」
俺は何度か頷いた。
「え、じゃあ有吉さんは、るいさんが大学時代から付き合ってた彼氏も知ってるんですか?」
竹内が急に慌てたように聞いてきた。
ここでその話をするなよと思った。
「…知ってる。」
自然と声が小さくなった。
竹内は唖然としている。
「え、なんなのその人。知り合い?」
「いや、有吉さん、一緒に仕ご…」
「おまえ、だめだぞ!」
俺は声を荒げた。
「だめですか?」
「絶対だめだろ。考えろよ。」
悪びれない竹内に笑ってしまったが、いろいろ考えたら笑えない話だ。
「え、なに、なに?有吉と一緒に仕事してるやつがるいちゃんの元彼なの?」
淳さんが聞いた。
「いや、ちょっとこれはね、本当にダメなん…ですよね。」
「有吉さんがどもってる。」
金田が珍しいものみるように言った。
「だめなんですよ、これは本当に。」
「まあ誰かは聞かんけど、彼女の元彼とでも仕事できる有吉すごいな!」
ジュニアさんは本当に感心したように言った。
「それは俺とその元彼の口の堅さとか事務所の力とかね…」
言葉を発するたびにドキドキする。
「でも気まずくないの?」
「まあ、いい子だから…」
「元彼いい子って言えるのすごいな」
亮さんが目を丸くした。
「嫌なヤツだったら絶対やんないですけど、初めて会ったときもすごい誠実にね、付き合ってたんですみたいなこと言ってくれたんですよ。」
「その状況で有吉にいい印象を与えられるその元彼すごいな。」
陣内さんが言った。
俺も何度か頷く。
「誕生日プレゼント交換とか普通にしてます。」
自分で不思議な気分だが、なぜかそれができるのはるいにも理由があるような気がする。
誰だと探っているやつもいるが、なかなかわからないはずだ。
「今日も、帰ったら、彼女、家にいるんですか?」
会はお開きになり、順番に店を出る中で金田がそう言ってきた。
「うん、まあね。」
「いいっすねえ」
「いや、でも本当若手にちょっかい出されないかが心配だわ。」
俺はそう言って、若手を睨んだ。
「誰なんすか、ちょっかい出したのって。」
「それは言わねえけど…」
睨んだアイツは逃げて行った。
おわり