ハイキュー!!

□○想い
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影山の部屋で放置状態の俺。

影山はというと、さっきからずっと慣れない手つきでスマホを操作中である。

誰かとやりとりしているらしいが、もしかしてまたアイツなのだろうか…。

「ねえ、それ誰と?」

「月島」

「また月島?」

「おう」

やっぱり思った通りの相手だった。

今までも一緒にいるとき何度か月島とスマホでやりとりしている影山を見たことがある。

普段俺とだってそんなに連絡を取り合ったりしないのに、ほぼ毎日学校で顔を合わせるであろう相手と頻繁にやりとりしてるなんて。


なにそれ。なんかおもしろくない。

おまえ月島とどんな関係なの。

前はいつも文句ばっか言ってたのに。

いつの間にそんな仲良くなったんだよ。


月島が影山のことをどんなふうに思っているかは知らないが、影山が俺ではない誰かと親しくしているのを見るのは嫌だった。

今の俺に比べたら月島の方がはるかに影山に近いところにいる。

そう思うと俺の中の嫉妬心が膨れ上がった。

どうせ俺なんかより今のチームメイトの方が影山にとっては大事な存在なんだろ…?


中学のとき何事もなく過ごせていたのなら、影山とは多分高校も一緒だったはず。

そしてバレーも一緒にやって、影山のそばにいるのも多分俺。

本当はそうなるはずだった、のに。

今更過去を振り返って都合よく妄想してみてもただ虚しいだけだった。

心中穏やかではない感情が渦巻いている。

「月島と仲良いんだ?」

「あ?よくねぇよ、あいつムカつくし」

「じゃあなんで、…やっぱなんでもない」

言いかけてやめた。

いま口を開いたら余計なことを言ってしまいそうだったから。


ムカつくなら無視すればいいじゃん。

月島のことなんか放っておけよ。

今は俺と一緒にいるんだろ。

だったら俺のこともっと見ろよ。

俺はおまえのことが―。


言ってやりたいことは沢山あるけれど、何も言えない。

俺と影山はただのオトモダチだから…。

いつからか友達以上の感情を持ってしまった俺は、黙ってただ影山を見つめることしか出来なかった。

「国見、こぇー顔してる」

スマホをいじるのをやめた影山が首を傾げて俺をじっと見る。

自分でも多少イラついた感情が顔に出てしまっている自覚はあったけれど、鈍感な影山に気づかれるとは思わなかった。

「…。誰のせいだよ」

「?だれ…」

全くわかっていない様子の影山は眉間にシワをよせている。

おまえの方がよっぽどコワイ顔してるんじゃないのかと言ってやりたい。

「わかんないなら、いい。俺、いまイラついてるから」

「なんでだ?」

「それ言わせる?」

「ダメなのか?」

「…じゃあ言うけど。影山が月島と仲良さそうにしてるから、だろ?」

もうどうにでもなれと少しなげやりになりながら嫉妬心丸出しで思ったことを口にした。

影山には俺の心情なんてわかるはずないだろう。

「は?仲良くねぇ、つっただろ」

「スマホいじりっぱなしじゃん、月島と何の話?」

「それは…」

言い淀んだ影山は握りしめていたスマホに視線を落とす。

そして暫く黙り込んだあと、何を思ったのかそのスマホをおずおずと俺に差し出してきた。

「え、何、見ていいの…?」

一応確認すると影山はコクリと頷く。

画面を覗けばそこには月島とやりとりしていた内容が表示されていた。


***


トビオ:どうすればいいんだ

月島:だからなんで僕に聞くわけ?

トビオ:ほかにきくやついねえ

月島:はぁ…。素直に言えばいいんじゃない?

トビオ:?なににいえ?

月島:王様漢字読めないの?すなおに言えばってこと

トビオ:おうさまいうな、すなおにいえねえ

月島:じゃあずっと今のままだよ、僕もう知らない

トビオ:おい、まて

月島:それよりいいの?僕とこんなことしてて

トビオ:なにがだ

月島:今一緒にいるんでしょ?

トビオ:いる

月島:誤解されるよ

トビオ:あ?なにされる?

月島:ごかい!とにかくちゃんと言いなよ、それとこれ以上巻き込まないで


***


「何これ、どういうこと」

俺が勝手に想像していたような内容ではなかったものの、全くもって意味がわからない。

「…月島に相談つーか…」

「相談て、何?」

「…くにみのこと…」

「なんで俺…?」

「……」

月島と何の話かと思えば俺のことって…。

もう一度2人のやりとりを読み返してみる。

良くわからないけれど影山は俺に何か言うことがあるらしい?

でもそれが何なのか考えてみても答えは出なくてモヤモヤするだけだった。

スマホから目を離して視線をあげれば唇を尖らせた影山が俺から顔を背ける。

微かに顔が赤いのは気のせいか。

「ねえ影山、俺に何か言うことあるの?」

「ぅぐ…」

「聞くから言ってよ」

俺がそう促せば影山は俯き、何か言おうと口をモゴモゴさせた。

「………が、……き、だ」

「え、何?聞こえない、もっと大きな声で―「だから俺はおまえのことが好きだっつってんだよちゃんと聞こえたか国見ボゲェッ!」

「ちょっ、は…?ええっ?」

いきなり声を張り上げキレ気味状態で衝撃的な言葉を一息に言い切った影山は、ゼイゼイ肩を上下させている。


すき?

俺のことが?

それってどういう好き?

影山も俺と同じ好きなの?

全然そういう素振りなかったじゃん?

それとも俺が気づかなかっただけ?


いろんなことが次から次へと頭に浮かんでいっぱいになった。

けれどそんな混乱状態の中でも俺にははっきり言えることが1つだけある。

まさかこんなタイミングでこの言葉を口にすることになるとは思ってもみなかったけど。

「好き」

「は?」

「俺も影山が好き」

「なっ、」

俺の告白に驚いた様子の影山はぽかんと口を開けている。

今まで俺の方こそこの気持ちに気づかれないように接してきたのだから、その反応は正しいよなと影山の間抜け面を見て俺は小さく笑った。


「ずっと前からおまえのこと好きだったよ」


想いを込めてもう一度告白すれば―。

さっきまでの嫉妬心は嘘のように消え去り、胸に温かいものがじんわり広がった。





end.

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