ハイキュー!!
□気まぐれでも
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中学で及川さんと出会って俺は及川さんのバレーに惹かれた。
少しでも及川さんのプレーに自分も近づきたくて及川さんがバレーをしている時はいつも目で追ってた。
ほんとは直接サーブとか教えてもらいたかったけれど、及川さんは俺のことが嫌いだからバレーに関して何ひとつ教えてくれることはなかった。
だから俺は及川さんのプレーを見ては何度も頭の中で繰り返し思い出しながら及川さんの真似をしていた。
高校の練習試合で及川さんと久しぶりに再会した。
前よりももっと凄いプレーをする及川さんを見てますます目が離せなくなった。
自分なりにたくさんバレーの練習を頑張ってきたつもりだったけれど、やっぱり及川さんには敵わないと思った。
相変わらず及川さんは俺のことが嫌いで顔を合わせるたびにいつも悪態をつかれた。
それでも俺は及川さんのバレーが好きだから、何を言われても及川さんを本気で嫌いにはなれなかった。
この先ずっとバレーを続けていれば、いつか及川さんがバレーを教えてくれる日がくるんじゃないかって、そう思ってる自分がいた。
国見や金田一たちとまた連絡を取るようになってからは、俺が聞かなくても及川さんの情報が勝手に耳に入ってくるようになった。
バレー以外のこともいちいち報告された。
及川さんに彼女ができたとか、別れたとか、ちなみに今は彼女がいるって聞いた。
初めはそんなことどうでもいいと思っていたけれど、いつのまにか及川さんに関することなら何でも知りたいと思うようになってた。
*
あるとき、国見に言われた。
『影山って、及川さんのこと好きでしょ?』
『なに言ってんだ?好きじゃねぇ』
『ウソ、自分で気づいてないだけ』
『なんで国見にそんなことわかんだよ?』
『だって俺が一番おまえのこと見てるから、かな…』
『はぁ?見てねーだろ、高校違うし毎日会わねーだろ?』
『バカで鈍感な影山には一生わからなくていいよ』
それから街で偶然及川さんと彼女らしい人が一緒に手を繋いで歩いてるのを見かけた。
楽しそうに笑っている及川さんを見たら急に胸がズキンズキンて痛くなって、及川さんに見つからないようにその場から走って逃げた。
認めたくなかったけれど、俺は及川さんが好きだってことに気づいてしまった。
国見の言うとおりだった。
そのことを国見に報告したら、やっぱりね、って溜息をつかれた。
数週間後、及川さんが彼女と別れたと国見から聞いた。
『及川さんに告ってみれば?』
『は?コクる…?』
『好きって言ってみれば?ってこと』
『なっ、言えるわけねぇだろ!』
『どうして?』
『…俺は及川さんに嫌われてる』
『ほんとにそうなのかな』
『どういう意味だ?』
『さあ?』
*
国見に言われたからってわけじゃないけれど、なんとなく及川さんの家の前まで来てしまった。
この時間なら部活が終わってもうすぐ帰宅する頃だと思った。
「とびお!?」
俺を呼ぶ声が聞こえて振り向くとそこには驚いた顔をした及川さんがいた。
「及川さんに話があります」
「なにっ?とびおちゃん、いきなりどうしたの?」
「俺、及川さんのことが好きみたいっす」
「え…?ええっー!?なになにっ、新手の嫌がらせ!?」
「ちげぇっす」
「じゃなにっ?バツゲームとか!?」
「それもちげぇ…。とりあえず俺の話はおわったんで帰ります」
「ちょっと、待ちな!とびお」
俺は言いたいことはちゃんと言ったから、スッキリした気分で帰ろうとしたら及川さんに呼び止められた。
「なんすか?」
「おまえ、及川さんのこと好きなの?」
「そうっすけど」
「チューしたいとかデートしたいとかの…?」
「…っす、」
急に真顔になった及川さんを見て、この人やっぱかっけぇな、って思った。
まじまじと見ていたら及川さんがいたずらっぽく笑った。
「ふーん、ちょうどいいや。及川さんいま彼女いないんだよね、」
「知ってます」
「何でおまえがそんなこと知ってんの!」
「国見から聞きました」
「…そう、国見ちゃんねぇ…」
国見の名前を聞いて及川さんはなにやら考えているみたいだった。
国見がどうかしたのかと思ったけれど、それよりも及川さんに何か言われる前に早く帰りたいと思った。
「いきなり来てすんませんっした、失礼します」
あいさつして今度こそ帰ろうとしたら、及川さんがまたいたずらっぽく笑った。
「待って、とびおちゃん、及川さんがつきあってあげよーか」
「…は?及川さん頭だいじょうぶっすか?」
「なんで告ってきたおまえがそういうこと言うわけっっ!?」
*
その後―。
よくわからないまま俺は及川さんと付き合うことになった。
及川さんは俺のことが嫌いだからただの気まぐれなんだと思った。
それでも俺は及川さんが好きだから気まぐれでもなんでもいいと思った。
end…?
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